6月29日経済資料協議会講演報告


去る6月29日の経済資料協議会で安藤正人先生の講演「日本のアーカイブズ研究とアーキビスト教育―国際環境の中で―」を拝聴いたしました。講演では、「日本のアーカイブズの現状」「アーカイブズ資源論」「アーカイブズ研究の世界的関心」「日本のアーカイブズ研究とアーキビスト教育の現状」と大きく4つのテーマについて語られ、大変盛り沢山な内容でした。以下講演内容の概略と若干の感想を述べたいと思います。

1) 日本のアーカイブズの現状
 日本では、国立公文書館の他、都道府県レベルで29、市町村レベルで20の公文書館が設置されている。近年、都道府県レベルでは整備が進んできたが、市町村レベルでの公文書館の設置は依然として少ない。その中で、本渡市立天草アーカイブズの設立(2002年4月)は特筆に値する。天草アーカイブズは@市民による地域文化創造の拠点、Aより開かれた市政運営の窓口、B情報資源を活かした高度な行政の実現という三つの理念を掲げて創設されたもので、地域アーカイブズ構築の先進的な事例として注目されている。

2) アーカイブズ資源論
 アーカイブズ資源論の今日的課題として、公文書の電子記録の普及により、紙媒体を想定した、作成部局(現用文書)→レコードセンター(半現用文書)→文書館(非現用文書)という従来の記録のライフサイクル論が揺らぎ、電子化に対応した総合的記録管理論の構築が急務となっていることがあげられる。

3)アーカイブズ研究の世界的関心と日本のアーカイブズ研究
 現在、International Research on Permanent Authentic Records in Electronic Systems (電子記録の永久真正性に関する国際研究プロジェクト)がブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)を中心に進んでいる。一方、日本の国文学研究資料館では、@近世近代の経営と文化に関する記録史料研究(史料学関連)
Aアーカイブズ情報の管理と国際標準研究(電子化関連)B東アジアのアーカイブズ資源に関する研究(中国・韓国・台湾)の三つの研究プロジェクトを推進している。

4)日本アーカイブズ学会の設立と日本のアーキビスト教育の必要性
 現在、世界のアーカイブズ教育の中心は、オーストラリア、カナダ、米国、ヨーロッパ諸国にあり、開発途上国のアーキビストは主としてこういった国への留学によって養成されているのが現状である。しかし、その例外として20余の大学にアーカイブズ学の修士課程が設置され、多くのアーキビストを輩出している中国や、金大中政権時代にアーカイブズに関する法整備やアーキビスト養成の大学院の設置が急速に進められた韓国がある。一方、日本のアーカイブズに関する法整備の進捗は緩慢で、アーキビスト教育については、現在のところ一部の大学や大学院でアーカイブズ関連の講座が設置されているにとどまっており、アーカイブ学を専門に学ぶ大学院のコースの設置が待たれる。そんな中で2004年4月にアーカイブズ学研究とアーカイブズ教育の振興を目的として日本アーカイブズ学会が設立された。日本におけるアーカイブズに関する研究教育体制の整備が急務となっている。

 以上、日本のアーカイブズ学研究の最前線でご活躍中の安藤先生から、日本および世界のアーカイブズ学研究の動向、公文書館の現状についてお伺いすることができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。図書館員にはアーカイブズの問題は一見直接関係ないように思われがちですが、実は図書館の蔵書として歴史記録史料を所蔵する場合も多く、アーカイブズ資料の記録、保存、公開は勉強してゆかなければならない重要なテーマだと痛感いたしました。

                                        記  アジア経済研究所 図書館 村井 友子
                                          平成16年9月10日