1.粘土の構造と化学組成

上原誠一郎
九州大学理学部地球惑星科学教室
〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1
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1.粘土鉱物の分類
 (1) 非結晶質および準晶質粘土
 (2) 結晶質粘土
2.粘土鉱物の構造
 2.1 粘土鉱物の基本構造
 2.2 ミスフィット
 2.3 ポリタイプ


1.粘土鉱物の分類
 粘土(ねんど)は“ねばつち”とも読まれるようにねばりけのある土を意味します。土壌学的には通常0.002 mm (2μm)以下の風化作用を受けた二次鉱物粒子をいいます。一般には水を含むと粘性をもつ土の総称で、各種の粘土鉱物・水分などから成ります。れんが・瓦・セメント・陶磁器の製造原料となります。私たちの身近に存在する粘土ですが、太陽系の惑星の中で粘土が見られるのは地球だけです。水惑星とも呼ばれるように地球表層には液体の水が存在します。この水を結晶の中に持っているのが粘土鉱物です。すなわち、粘土は地球を代表する鉱物です。隕石の研究によって太陽系の形成初期には大量の粘土鉱物が形成されたことが知られていますが、現在も粘土が形成されているのは地球だけでしょう。
 鉱物は地質学的な過程で生じた結晶質(一部には非晶質)の元素あるいは化合物です。多くの粘土は単一のあるいは複数の鉱物からできています。粘土を作る鉱物の結晶のサイズや結晶性の程度には普通の鉱物と比べ著しい違いがあることも多く認められます。粘土の主体をなすものは層状珪酸塩鉱物です。その中でもカオリン鉱物、雲母粘土鉱物、スメクタイトおよび混合層鉱物は微粒の鉱物として粘土中に広く産する典型的な粘土鉱物です。蛇紋石鉱物、タルク、緑泥石、バーミキュライトなどは粘土鉱物としても見いだされますが、結晶の大きな鉱物と共に粘土以外の岩石の構成鉱物として産出することが多いようです。けれども、これらは鉱物学的にみると典型的な粘土鉱物と密接な関係があり、粘土鉱物として取り扱われます。
 層状珪酸塩(layer silicate)鉱物は構造的な特徴と化学的な特徴に基づいて分類されています(表1)。層状珪酸塩はフィロ珪酸塩(phyllosilicate)とも呼ばれます。この特徴は雲母(ウンモ、あるいはウンボ、キララともいいます)に代表される平行に薄くはがれやすい性質です。昔は“千枚はがし”ともいっていました。この性質は劈開(ヘキカイ)といいますが、雲母の原子配列の特徴を反映したものです。Si-O四面体が平面的につながっている構造が基本となっています。単位構造の中に雲母はこのSi-O四面体シートを2枚と八面体シートを1枚含みます。カオリン鉱物ではそれぞれ1枚づづ含んでいます。

表1 層状珪酸塩鉱物(粘土鉱物)の分類の基礎事項
 (1)構造的な特徴-------珪酸塩層のタイプ
     四面体シート・八面体シートの組み合わせ  1:1層 2:1層
 (2)化学的な特徴-------八面体陽イオンの種類(3八面体、2八面体)
     珪酸塩層の電荷、層間陽イオン

 雲母は英語ではmicaで、マイカと呼ぶ時もあります。マイカは鉱物種の名ではありません。鉱物の種(species)は結晶の構造と化学組成で定義されます。マイカ族に属する種類の鉱物の族名(group name)です。よく知られている白雲母(muscovite)は種名で、アルミニュウムを含むものです。黒雲母(biotie)は系列名でマグネシュウムを多く含む金雲母(phologopite)と鉄を多く含む鉄雲母(annite)の固溶体組成全体を表します。このように層状珪酸塩は結晶構造により族に分類され、さらに化学組成により細かく分類されています。
 鉱物中の原子配列はX線回折法で調べる事が出来ます。1910年代から始まったこの実験法で比較的大きな結晶を作る鉱物の原子配列は次々と解明されていきました。しかし、粘土鉱物は一般に非常に結晶が小さく、X線単結晶法では原子配列を求めることが出来ません。それで、粘土鉱物の研究者はいち早く1950年代に電子顕微鏡を取り入れて研究を始めています。その結果、一部の粘土鉱物は非常に美しい六角板状結晶を示すことやハロイサイト・クリソタイルがチューブ状の形態をしめすことがわかりました。当時の電子顕微鏡は現代の装置に比べると性能は悪く、原子スケールの観察は高分解能電子顕微鏡法の登場まで待たねばなりませんでした。1980年代に普及した高分解能電子顕微鏡法は粘土鉱物の研究に大きな進歩を与えました。その結果、従来、層状珪酸塩に分類されていた粘土鉱物の一部は四面体シートが2次元的に無限に広がる構造ばかりでなく四面体シートが反転したり、連結が切れて鎖状の四面体シートを持つ構造をとることなどが明らかになりつつあります。しかし、微細な結晶の場合、解析が難しく詳細な結晶構造が不明のままのこされている粘土鉱物がたくさんあります。
 この解説では層状珪酸塩に属する粘土を中心に説明しますので、それ以外の通常粘土鉱物として取り扱われるものについては、以下に、簡単に示します。

(1) 非結晶質および準晶質粘土
 アロフェン(allophane)は含水アルミニュウム珪酸塩でSiO2/Al2O3モル比(珪ばん比)が1.0〜2.0で、電子顕微鏡下で直径35-40Åの中空状球状粒子の集合をなします。イモゴライト(imogolite)は珪ばん比が1で微細なチューブの集合体からなります。ヒシンゲライト(hisingerite)はアロフェンに対応する含水鉄珪酸塩ですが、その構造や性質には不明な点が多く残されていますフェリハイドライト(ferrihydrite) は含水酸化鉄です。数nmの超微細結晶の集合体で、最近、多く報告されるようになってきました。地表環境の風化物や温泉の沈殿物に含まれています。オパール(opal)は水を含む酸化ケイ素です。

(2) 結晶質粘土
(a) 層状珪酸塩以外の珪酸塩
 沸石(zeolite)は(Si,Al)O4四面体が頂点酸素を共有して3次元の骨組みを作るテクト珪酸塩に属します。一般に化学式はAx(Si,Al)yO2z・nH2O、A=Na, Ca, Kなどで表現されます。一般の粘土鉱物と比べて結晶の大きさははるかに大きくサイズ的には粘土鉱物ではありませんが、その立体構造のなかに大きな空孔があり水分子と交換性陽イオンが含まれています。それで、イオン交換性や吸湿性があり、層状珪酸塩の粘土鉱物に見られる特徴と一致しており粘土鉱物の仲間に入ります。
(b) 層状珪酸塩に近い構造
 セピオライト(sepiolite)はマグネシュウムの含水珪酸塩で2:1リボン構造をとります。リボン状に配列した四面体シートが頂点を逆転しながら隣のリボン状に配列した四面体シートとつながります。一方、八面体シートは連続していません。
 カーロスターナイト(carlosturanite)は蛇紋石に似た構造ですが連続した八面体シートとリボン状の四面体シートからなっています。四面体シートは連続していません。
(c) 層状珪酸塩
これについては次の節で説明します。

2.粘土鉱物の構造
2.1 粘土鉱物の基本構造
 層状珪酸塩を作っているSi-O四面体の2次元的なつながりを四面体シート(tetrahedral sheet)といいます(図1)。この四面体シートと組み合うAl-O、Mg-O等の八面体の網状のつながりは八面体シート(octahedral sheet)と呼ばれます(図2)。八面体シートに入る陽イオンがAl3+など三価のイオンの場合は図2に示したように1/3の空席ができますが、 Mg2+など二価のイオンの場合はすべての八面体陽イオン位置が満席になっています。これらはそれぞれ、2八面体 (dioctahedral)、3八面体 (triocathedral)と呼ばれます。四面体シートと八面体シートは陽イオンを幾つかの陰イオンが囲むことによりできる多面体がつながった構造をとります。二次元的な周期a、 bはそれぞれ約5.2、 9.0Åです.両シートともその厚さは約2.2Åです。この両シートが組み合って1:1層あるいは2:1層と呼ばれる複合層(珪酸塩層、silicate layer)が作られます。1:1層が積み重なってできる構造を1:1型構造、2:1層が積み重なってできる構造を2:1型構造といいます。



 図3に1:1層の構造を示します。代表的な1:1層の鉱物はカオリンと蛇紋石があります。化学式はそれぞれAl2Si2O5(OH)4、Mg3Si2O5(OH)4となります。四面体側の表面は底面酸素、八面体側の表面はOH基からなります。底面酸素と表面OHとは配列はちがいますが、個数は同じで積層するときにOとOHの対を作り水素結合が形成されますので、1:1層のみで3次元的な結晶ができます。しかし、層の広がりは極性のためにバランスを失いやすく、層が湾曲することもあり大きな平板結晶はできにくいと考えられています。実際、粘土サイズとして産出することが多く、肉眼的サイズの単結晶の産出は極めてまれです。X線単結晶法による構造解析の報告例は余り多くありません。


 2:1層は層面に垂直な方向に関して対称的であり、両表面はいずれも四面体の酸素からなります(図4)。それで、雲母や緑泥石は大きな板状結晶に成長することもあります。2:1層のみの積層でできる鉱物にパイロフィライト(Al2Si4O10(OH)2)、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)があります。この2種の鉱物の2:1層は電気的には中性ですが、多くの2:1層の鉱物(X2-3(Si,Al)4O10(OH)2)では内部の陽イオン置換(Si4+→Al3+)によって負の電荷を示します。このために層間に正の電荷を持つ陽イオンその他の層間物質をはさんで、正負正負・・・・・・・・電荷互層からなる3次元の結晶を作ります。このときの2:1層の負電荷を層電荷(layer charge)と呼び、単位組成式(X2-3(Si, Al)4O10(OH)2)当たりの電荷の絶対値で示します。2:1層の鉱物はこの値によって分類されています(表2,図5)。タルク、パイロフィライト0:雲母、雲母粘土鉱物0.6-1.0:脆雲母〜2:緑泥石0.8-1.2:バーミキュライト0.6-0.9:スメクタイト0.2-0.6です。表3には代表的な層状珪酸塩鉱物の化学組成をまとめました。化学式は主にFleischer and Mandarino (1995)から引用しました。



2.2 ミスフィット
 ここでは理想構造を示しましたが、現実の構造では四面体シートと八面体シートの横方向の大きさに違いがあります。これをミスフィットと呼び、正多面体からなる理想構造からの変形が認められます。水酸化鉱物のギブサイト(Al(OH)3)とブルーサイト(Mg(OH)2)の値を基に2八面体シートと3八面体シートのb軸の長さを求めるとそれぞれ8.64Åと9.36Åになります。四面体シートはSi-O = 1.618Åとして理想構造をとるとすればb = 9.15Åとなります。四面体のSiはAlにより置換されますので、AlIV-O = 1.748Åとして計算するとb = 9.89Åとなります。この関係からb(Si1-xAlx) = 9.15Å+ 0.74xと近似され、(Si3Al)組成の四面体シートではb = 9.40Åとなりブルーサイトから求めた3八面体シートの値に近くなります。
 これらの理想構造から計算した横方向の大きさから2:1型の雲母族のミスフィットを考えてみます。3八面体型金雲母の両シートの大きさは9.36Åと9.40Åで四面体シートが僅かに大きな値です。2八面体型の白雲母では8.64Åと9.40Åでかなり四面体シートが大きくなります。また、1:1型の蛇紋石―カオリン族では3八面体型の四面体シートが相対的に小さく、逆に2八面体型の四面体シートが相対的に大きくなります。このために、2八面体型の鉱物中の四面体シートは底面酸素の三角がシート面上で交互に反対方向に回転することにより、横方向のサイズを小さくして、八面体シートと連結しています。これを四面体の回転(tetrahedral rotation)と呼びます。回転方向は連結した八面体シート中の陽イオンに底面酸素が近づく方向であり、回転角度は十数度以内のことが多いです。図6は理想構造の四面体シートと四面体の回転角23゜の四面体シートを比較したものです。図6(b)に理想構造と回転変形したときの単位胞を示していますが、四面体シートは横方向に10%程度大きさを縮小できます。四面体のSiをよりイオン半径の大きなAlが置換した脆雲母族のクリントナイトの四面体回転角が23゜であることが知られています。また、白雲母では11-13゜、金雲母では6-8゜の回転角度になっています。実際には八面体シートも変形していますが、八面体は稜を共有しているために変形の程度は小さいものです。


 さらに、両シートのミスフィットを層が湾曲して解消している場合があります。1:1層の鉱物では大きい方のシートを外側にして層が湾曲し、チューブ状の形態をとることさえもあります。3八面体型のクリソタイルは八面体シートを外側にして、2八面体型のハロイサイトは四面体シートを外側にしています。図7にクリソタイルの四面体シートを示します。内直径60Åで一枚の四面体シートのみを示し、八面体シートは省略しています。電子顕微鏡を用いて観察された結果では外直径150-500Å、内直径20-150Åのチューブ状の外形をなしています。その断面は同心円状またはらせん状です。


 また、3八面体シートを外側に湾曲した1:1層が四面体シートを反転しながらつながり、緩やかな波の大きな周期(35-50Å)を持った超構造を作ることもあります(アンチゴライト、図8)。この場合には四面体と八面体の組成比は理想式からずれて、四面体の割合が僅かに大きくなります。さらに、Mgよりもイオン半径の大きなFeやMnからなる蛇紋石のグリーナライトやカリオピィライトでは2次元的に四面体シートの反転が起こってさらに複雑な構造をとっています。


2.3 ポリタイプ
 層状珪酸塩の単位構造は次々に積み重なって3次元の立体構造を作ります。このとき単位構造層は同じであっても、積み重なりの上下間の位置関係が異なる場合があります。その結果、結晶構造全体では、単位胞の形・大きさやその中に含まれる単位構造層の数を事にする多くの異なった構造が形成されます。層状構造をもった物質にみられるこのような現象をポリティピズム (polytypism) と呼びます。そして、個々の構造をポリタイプ (polytype) といいます。同一の化学組成で異なる結晶構造を示す現象を多形(同質異像)といいます。例えば、石墨とダイヤモンド(何れも炭素から出来ている鉱物)の関係です。ポリティピズムは多形の一種になりまが、多形は温度や圧力などの生成条件が異なるときに生じます。一方、ポリタイプはこれらの条件の差が無いか、あってもわずかなものです。
 雲母では多数のポリタイプが知られています。ポリタイプを区別する記号として、単位胞に含まれる単位構造の数と単位胞の結晶系を示す記号、1M、2M、3T、6H などが用いられます。Mは単斜(monoclinic)、Tは三方(trigonal)、Hは六方(hexagonal)晶系を意味しています。すなわち、2Mは単位胞中に単位構造層2枚を含み単斜晶系の単位胞の形をとるものをいいます。もし、同じ晶系に属し、同じ枚数を持つ異なる単位胞の形を取るポリタイプが存在するときには添え字をつけて2M1、2M2と区別しています。
 雲母の2:1層内では八面体シートをはさんで向かい合う二枚の四面体シートはx軸方向に理想構造で-a/3だけずれています(図4)。最も簡単なポリタイプは-a/3のずれが同じ方向で繰り返すもので、1枚の雲母層を単位胞とする単斜格子1Mとなります。このずれの方向が120゜ずつ左と右に交互に回転しているのが2M1で120゜左(あるいは右)の回転を繰り返す3T、180゜回転の2Or、60゜左と右回転を交互にとる2M2、60゜左(あるいは右)を繰り返す6Hがあります(図9)。この6通りが雲母のよく知られているポリタイプですが、さらに複雑な積層を持つポリタイプも多数報告されています。しかし、一般の雲母粘土鉱物では乱れた積層を持つ1Mdと呼ばれるポリタイプが最も多く、1M、2M1がこれにつづきます。


 カオリン鉱物は2八面体型1:1層が積み重なる構造をとっています。1930年代の始めにその中に3種類の構造の異なる鉱物、カオリナイト、ディカイト、ナクライトがあることが明らかにされました。これらはポリタイプの関係にあります。現在ではポリタイプは独立した鉱物種としては認めないことになっていますが、歴史的な経緯もあり、カオリン鉱物の場合は例外的に独立した鉱物名が与えられています。

参考文献
Brindley, G. W. and Brown, G. ed. (1980) Crystal Structure of Clay Minerals and Their X-ray Identification. Mineralogical Society, London, pp495.
白水晴雄 (1988) 粘土鉱物学,朝倉書店, pp185.
Fleischer, M. and Mandarino, M. (1995) Glossary of Mineral Species, 1995. The Mineralogical Record Inc. Tucson. pp280.

表2.粘土鉱物に関係ある層状珪酸塩鉱物の分類
表3.層状珪酸塩鉱物の化学組成