5.粘土の合成

山田裕久
物質・材料研究機構 物質研究所
〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1
e-mail : YAMADA.Hirohisa@nims.go.jp


1.はじめに
2.粘土鉱物の合成装置
 2. 1 水溶液反志装置(常圧)
 2. 2 水熱合成装置
  2. 2. 1 モレー(Morey)型反応容器
  2. 2. 2 オートクレーブ
  2. 2. 3 テストチューブ型反応容器
 2. 3 高圧装置
  2. 3. 1 内熱型高温高圧装置(内熱式ガス圧反応容器)
  2. 3. 2 ピストンシリンダー型装置
  2. 3. 3 ベルト型装置
  2. 3. 4 超高圧高温装置
  2. 3. 5 ダイヤモンド・アンビル装置
 2. 4 固相・融液反応装置
3.粘土鉱物合成用の出発物質
4.粘土鉱物の合成
 4.1 スメクタイト
 4. 2 カオリナイト
 4. 3 マイカ(雲母)
 4. 4 混合層鉱物
 4. 5 アロフェン、イモゴライト
 4. 6 ハイドロタルサイト
 4. 7 ゼオライト
5.まとめ
参考文献

1.はじめに
 地球表層には粘土は多量に存在します。例えば、カオリン鉱床・ベントナイト鉱床等の直径数百mの「露天掘り」光景を思い浮かぺて頂ければ容易に想像がつくでしょう。では、このように無尽蔵に近い粘土を人工的に「合成」する目的は何でしょうか。主として以下の3点が考えられます。
(1)天然での粘土鉱物の生成条件・安定領域・生成機構を知ることです。これは鉱物学・岩石学等の地球科学の一分野として発展し、種々の粘土鉱物の合成と相関係図・相安定図の作成がなされてきました。さらに風化・続成・熱水作用にみられる鉱物の変質(溶解、沈殿、成長)にともなう粘土鉱物の生成機樽や変質機構の解明のために「人工変質実験」としても行われています。
(2)粘土鉱物の結晶化学的性質の解明です。種々の化学組成を有する粘土鉱物、すなわち一連の同形置換試料の合成、さらには詳細な構造解析のための単結晶合成が目的とされています。
(3)新素材としての工業材料の開発を目的とした合成です。ここでは純粋試料の大量合成もその目的の一つとなっています。天然に存在する粘土鉱物は、不純物等を含むためいわゆるファインセラミックス分野への適用には不十分です。従って人工的に不純物のない「高純度粘土鉱物」の合成が必要となります。
 「合成」すなわち「ものつくり」で一番身近な「料理」を思い浮かぺてください。料理をするには、包丁・まな板等の「道具」、肉・野菜等の「素材」が不可欠です。従って以下の紹介では、料理の際の「道具」に相当する「合成装置」からはじめ、素材にあたる「出発物質」、最後に「特徴あるメニュー」の品々、すなわち各種粘土鉱物の簡単なレシピについて述べ、粘土鉱物を人工的に「料理」するための案内を行いたいと思います。

2.粘土鉱物の合成装置
 粘土鉱物は一般に構造水・OHイオンを含んでいるため、特殊な例を除いて通常水溶液もしくは水熱条件が必要となります。特殊な例とは、OHイオンと近いイオン半径のフッ素イオンを含む粘土鉱物のことです。この場合は、メルト・溶融体からの合成が可能となります。以下では、水溶液反応装置(常圧)、水熱合成装置、高圧装置、メルト合成装置・固相反応装置の順に説明します(表1)。

2. 1. 水溶液反志装置(常圧)
 Al、Siおよびその他の金属イオンを含む溶液を100℃以下の条件で反応させ、化合物を析出・沈殿、すなわち核形成・成長過程を合成させるための装置です。このように書くとおおげさになりますが、要するに器具として「ガラス製ビーカーもしくは三角フラスコ」、「フッ素樹脂製ビーカーもしくは三角フラスコ」を用いて合成を行うことです。必要に応じて、還流冷却器(condenser)を併用すれば良いと思います。今はやりの「ソフトケミストリー」であり、地球表層の比較的マイルドな条件で生成する粘土鉱物の再現実験にはなくてはならない方法です。

2. 2. 水熱合成装置
 水熱合成とは、「高温高圧の水が関与する合成」と言い換えればわかりやすいかと思います。特にこの語は地球科学の分野では今でも「熱水合成」と訳されることがありますが、現象としては同様のものを意味しています。水熱状態は、自然界のものであれ、実験室内のものであれ、解放系では得られず、すべて閉鎖系でのみ得られます。従って水熱合成装置に要求される重要な要素は、高温高圧の水(時には超臨界水)を発生させ、そのような条件を長時間保持できる密閉容器・耐圧反応容器を工夫することです。以下にその代表的な装置を紹介します。

2. 2. 1. モレー(Morey)型反応容器
 直径が10 cmぐらいのステンレススチール製等の肉厚カップを向かい合わせにねじ合わせて密閉するようになっています。水蒸気の漏れを防ぐために、接触部を円錐形の面にし、さらにその部分に銅製等のワッシャーを入れ、これをカップによって締め付けるようにしてあります。ステンレススチール製容器では、350℃、0.5 kbぐらいまでは使用できます。クロム・モリブデン鋼等の特殊鋼製ならば、最高600℃、4 kbまで使用できます。試料は直接か、もしくは金、自金等の貴金属チューブに封入して反応容器内に入れ、ボンベ(反応容器)全体を電気炉・オーブン内に入れて所定の温度に保持します。反応液に腐食性の強い酸やアルカリを使用する場合は、反応容器内壁を貴金属でライニングする場合もあります。
 反応温度が220℃以内ならば、テフロン製容器を内装したステンレススチール製耐圧容器がよく用いられています。内容積100 mlまでのものは、手軽で使い勝手も良くできています(図1)。またこの改良型として、ポットミル式圧力容器が開発されています。この容器をローラーを備えた電気炉に設置し、水熱処理を行うことにより、合成の促進効果・小さな結晶粒子径の迅速合成が報告されています。
 この反応容器は、以上のように手軽に使えますが、残念ながら圧力と温度を任意に変えられない欠点があります。そこで反応容器内の自由容積に対する溶液の占める割合(充填率)によって所定温度に対する圧力を決めなくてはなりません。

2. 2. 2. オートクレーブ
 モレー型反応容器を改良したもので、容器内の圧力は圧力計で読みとれるようになっています。各種市販されており、反応容積も数10 mlから1 lぐらいまで選択することができます。粘土鉱物ではありませんが、時計・パーソナルコンピュータ・移動体通信等の幅広い分野で「水晶発振器」として使用されている水晶は、現在この装置によって年間2500〜3000トン合成されています。人工水晶育成のためのオートクレーブは、特注で直径80 cm、長さ14 m、内容積7000 lと桁違いに大きな装置です。
 加熱はモレー型反応容器と同様に、外熱式です。使用条件は反応容器の材質、容量等によって異なりますが、最高圧力と温度は、2 kb、600℃ぐらいです。安全性のために、多くの場合「安全弁」がとりつけられています。

2. 2. 3. テストチューブ型反応容器
 モレー型反応容器の持つ欠点、たとえば@加熱温度に対して独立に圧力が制御できないこと、A高温高圧の状態を長期間(数ヶ月以上)に渡って保持することが困難であること等を除くために考案された反応容器です。地球科学におけるこれまでの相平衡に関する研究成果の多くはこの容器によって生み出されてきました。
 市販されている一般的な反応容器は、直径25 mm、長さ200 mmの円柱で、その中心に直径6 mmの穴があいており、その穴の中に試料を封入した貴金属チュープと水を共に入れます。反応容器はコーン型シールによって密封されます(図2)。コーン型シールとは、パッキング材を特別に必要としない形式で、雄型コーンがそれよりわずかに開いた雌型コーン(多くの場合、雄:59°、雌:60°)にナットの締め付け力によって押しつけられます。その結果、コーン同士の接触面は内部圧より高くなるので、流体の漏れがなくなります。反応容器は、高圧用パイプで加圧装置(高圧ポンブ)に連結され、必要に応じて圧縮された水が反応容器内に送り込まれて、所定の圧力が温度と独立に制御されます。反応容器は、温度調節器により一定の温度に制御された電気炉によって加熱されます。
 使用できる温度・圧力範囲は反応容器の材質によって異なり、HanesのStellite 25の場合には、800℃、4 kb、G.E.のRene 41の場合には、740℃、10 kb、さらにTZM合金では、1100℃、3 kbまで使用できます。
 テストチューブ型反応容器を用いた反応装置システムは、一台の加圧装置を共有して多数の反応容器を独立の温度・圧力条件に長時間保持できます(図2)。従って先に述ぺたように、定量を要する鉱物の相平衡実験には最適の装置であります。
 容器内の試料の混合や反応を促進するために、振とう式や撹拌式になっているものもあります。振とう式に関しては、ディクソン型(Dickson rocking antoclave)が地球化学分野においてよく用いられています。内容積250 ml程度で、実験中に反応溶液を取り出すことができる利点を有しています。

2. 3. 高圧装置
 地球表層の比較的低圧・低温のマイルドな条件で生成する粘土鉱物ための「人工合成装置」としては、以下に述ぺる高圧装置はオーパースペックと思われるかもしれません。しかし特定の目的のために、粘±鉱物に対しても使用されています。各種高圧装置の特微を簡単に述ぺたいと思います。

2. 3. 1. 内熱型高温高圧装置(内熱式ガス圧反応容器)
 円筒型圧力反応蓉器内(内径50 mm、外形300 mm、長さ400 mm程度)に、気体(Ar等)を圧入し、高圧を発生させる装置です。試料はテストチューブ型反応容器の場合と同様に、貴金属チューブに封入し、炉と共に円筒内に設置します。この装置での最高圧力と温度は、10 kb、1400℃ぐらいです。また実験に際しては酸素分圧の自由な制御等の種々の条件での研究が可能です。このような条件は、地殻下部である地下30 kmくらいまでの圧力条件下での高温状態をカパーしており、地球科学者にとっても魅力的な装置です。ただし、日本においては高圧ガス保安法の規制を受けることを考慮しなけれぱなりません。

2. 3. 2. ピストンシリンダー型装置
 固体地球科学関係の高圧実験室に全世界的規模でもっとも普及している装置です。基本的にはシリンダーと呼ばれるタングステンカーバイド(WC)等の超硬合金製の円柱の中心に穴のあいたものに、試料を設置した後、その両端から同じくWC等の超硬合金製の円柱、ピストンを油圧プレスを用いて押し込むことにより圧力を発生させる装置です。赤外分光(IR)測定を行った経験のある方には、ペレット作り用の器具を大型化したものと考えていただければよいと思います。試料は円筒形のタルク等の圧力媒体に組み込んだ管状グラファイト中に設置されます。ここで管状グラファイトは、抵抗体として働き、定常電流を流すことにより高温を発生することが出来ます。この装置では、50 kb、1800℃までの圧力・温度を発生することが可能です。
 この装置を用いて、金雲母をはじめとするのマイカ、蛇紋石、緑泥石等の安定圧力・温度領域が研究されてきました。

2. 3. 3. ベルト型装置
 1950年代にGeneral Electric杜でダイヤモンド合成用に開発された装置として有名です。今目においても、人エダイヤモンドは本装置をもちいて合成されています。装置は基本的には、ピストンシリンダー型装置と同様です。その違いは、@円錐形ピストン、A断面が円錐形に近いシリンダーであること、さらにB大容量の試料の高圧高温処理が可能である等の特徴を有していることです。この装置では、80kb、2500℃までの圧力・温度を発生することが可能です。
 本装置を用いて、長さ数十μmスメクタイト結晶が既に合成されています。この装置を用いた粘土鉱物分野での今後の展開が楽しみです。

2. 3. 4. 超高圧高温装置
 ブリッジマン・アンビル型装置、多数アンビル型装置(テトラヘドラル・アンビル型装置、キュービック・アンビル型装置、2段式キュービックーオクタヘドラル・アンビル型装置等)などを上げることができます。ブリッジマン・アンビル型装置は、一対の超硬合金製の頂角の大きな円錐の先端を平坦にしたアンビルと呼ばれるものを対向させ、その間に試料をはさんで加圧する簡単な装置です。この装置を用いて容易に100〜150 kbの超高圧を発生することができます。多数アンどル型装置は、ブリッジマン・アンビル型装置等の対向アンビル装置の欠点、すなわち@試料空間が小さい、A圧力分布が不均質等の解消をねらい、多数のアンビルを使って3次元多面体の試料を多方向から同時に圧縮する装置です。この装置により、300 kb、3000℃近くの条件の発生が可能です。詳しくは参考文献を見てください。
 2段式キュービックーオクタヘドラル・アンビル型装置を用いたスメクタイトの報告があります。極端条件を用いた粘土鉱物の合成にはもってこいの装置で、高結晶性(単結晶)スメクタイトの合成に成功しています。

2. 3. 5. ダイヤモンド・アンビル装置
 宝石用にブリリアンカットされた2傾のダイヤモンド単緒晶を使う「エレガントな」装置です。使用されるダイヤモンドはさしわたし0.2〜3 mm程度(普通0.2カラット以下)の小粒です。2個のダイヤモンド単結晶の間に試料を挟み、加圧する「手のひらの上に乗る」小型の装置です。この装置は、超高圧下のX線回折・光吸収実験、さらに赤外線レーザービームによって試料のみを加熱できる利点もあります。
 この装置をもちいて粘土鉱物そのものを合成しようとする試みは筆者の知る限りありませんが、圧力下での膨潤挙動解明等の研究に精力的に用いられています。

2. 3. 6. 衝撃超高圧実蒙装置
 ハンマーでクギをたたくと、衝突部分に超高圧が発生することは容易に想像できることと思います。隕石が秒速数十kmの超高速で地球表面に衝突し、形成したクレーターはその好例です。このように物体同士を高速で衝突させ、不連続な立ち上がりをもった衝撃波(非常に高い応力状態を伴った不連続波と定義されている)を形成し、物体の中を通し慣性力により高圧状態を実現させるのが衝撃超高圧実験装置です。装置としては、ライフル銃を大型化(銃身の太さが50 cm程度、長さが10 m以上)したものを思い浮かべてください。爆薬の爆発ガスを利用して飛翔体を測定試料に衝突させるのが基本的原理です。
 この装置をもちいて、隕石中に見いだされたサポナイト、蛇紋石等の層状ケイ酸塩の成因等が最近議論され始めています。

2. 4. 固相・融液反応装置
 固相反応もしくは溶融反応による合成のための装置です。糟造中の水酸基をフッ素イオンで置換したフッ素系粘土鉱物の合成に適用されています。簡単にいえば、電気炉です。ブリッジマン法と呼ばれる、溶融体の入ったルツボを管状炉内で規則的に降下させるための「ルツボ降下法」用の炉はその代表です。工業的に大量合成が必要な場合は、内熱式電気溶融炉が用いられます。この方法はるつぽを必要としません。炉内に、黒鉛電極・黒鉛棒発熱体と共に原料を設置します。通電により原料が徐々に溶け、ついには溶融体に直接電流が流れ溶融が連続します。溶融量が十分になった後、徐冷、結晶化させて目的の化合物を得ることができます。

3.粘土鉱物合成用の出発物質
 「料理の素材」は「味」に大きな影響を与えます。合成物の「出来ばえ」もおおきく出発物質の選択に依存します。
出発物質としては、天然鉱物などの結晶質固体、非晶質固体、溶液などが使用されます(表2)。反応速度、出発物質の均質性の観点からは、天然鉱物や酸化物試薬の機械的混合物は不適切な場合があります。均質性・反応活性を考慮すると、非晶質物質が適切と考えられます。非晶質物質としては、ガラス、ゾル、およびゲルがあります。ガラスは、目的とする組成に試薬物箏を混合し、高温溶融の後に急冷する事により得ることが出来ます。また溶融・急冷ではガラスになりにくい組成のものは、ガラスエ業で用いられているゾル一ゲル法を用いて出発物質を得ることが出来ます。よく知られた事実ですが、この場合、調整法により実験結果が大きく左右されます。

 以下では、非晶質物質の調整法を中心に、出発物質の例をいくつか挙げたいと思います。

例1:ガラス
酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム等必要な試薬を所定の量比に均質に混合します。混合物を白金るつぽに入れ、電気炉中にて融点以上に一定時間保持した後、水中に落下させるなどして急冷し、ガラスを生成します。得られたガラスに対して、粉砕・溶融・急冷の操作を数度繰り返し均質化します。最終的に、ガラスを粉砕・微細化し、水とともに反応蓉器もしくは貴金属チューブに封入し、出発物質とします。

例2:シリカ・アルミナ系非晶質物質
@コロイダルシリカとアルミナゾルを所定の組成比に混合後、分散剤である酢酸を加熱分解除去し、非晶質粉末を作成します。この粉末と水の混合物を出発物質とします。
Aオルトケイ酸およぴアルミニウムイソプロポキシドをそれぞれ加水分解して得られるゲルを所定の組成比に混合して出発物質とします。もしくはオルトケイ酸およぴアルミニウムイソプロポキシドを所定の組成比に混合した後、同時に水和させてゲルを調整し出発物質とします。
Bケイ酸ナトリウム(水ガラス)と硫酸アルミニウムあるいは硝酸アルミニウムからゲルを調整し、出発物質とします。

例3:ゲル
所定量のケイ酸ナトリウムを蒸留水に溶解させ、モノマーからなるケイ酸水溶液を調整します。この溶液に、塩化マグネシウムを溶解させ、均一・透明な溶液とします。ここへ、0.1〜1Mの水酸化ナトリウム水溶液をゆっくり滴下し、沈殿を生じさせます。この沈殿物を出発物質として、適切な条件(温度、圧力、pH、他のイオン濃度)のもとに結晶化させます。

例4:含水ゲル
硫酸マグネシウム水溶液にアンモニア性水ガラス水溶液を滴下した後、続いて硫酸アルミニウム水溶液を滴下して沈殿させます。生成含水沈殿物をろ過・水洗した後、アルカリイオンを加えてスラリーとして出発物質とします。

例5:乾燥(無水)ゲル[ハミルトン・ヘンダーソン法]
1)所定量のマグネシウム硝酸塩・アルミニウム硝酸塩・炭酸ナトリウムを溶解し、硝酸塩水溶液とします。
2)所定量のオルトケイ酸とエタノール混合液(容積比で1:1)に1)の硝酸塩水溶液を加え、撹搾します。
3)2)の溶液を撹拝しながら、1:1アンモニア水(市販のアンモニア水を2倍に薄める)を滴下し、全体をゲル化させます。
4)生成したゲルを1晩静置し、熟成させます。
5)ゲルを400℃前後は特に脱NOx反応等に注意しながらゆっくり加熱し、700℃で一晩保持し、無水ゲルを得ます。

4.粘土鉱物の合成
 「道具」と「素材」がそろいましたので、次は「レシピ」です。種々の粘土鉱物の簡単な「レシピ」を紹介する前に、粘土鉱物の合成法全般について簡単に紹介したいと思います。合成法は大きく分けて次の3つの方法があります。

@出発物質を、目的とする反応温度(熱エネルギー)と反応時間、必要に応じて反応圧力に保持して、溶解析出もしくは固相・融液反応を用いて合成する方法です。この場合合成される粘土鉱物は、特に反応温度と反応時間に依存して、熱力学的平衛相もしくは準安定相として得られます。充分な反応温度と反応時間を与えた場合は、先に述ぺた出発物質の種類によらず熱力学的平衛相が得られます。

A日的とする粘土鉱物組成のモノマーを含む希薄な溶液から直接、粘土鉱物を析出させる方法です。この方法では、溶液の濃度を高くするとイオンの重合反応が促進され容易に非晶質のゲルが析出します。また、この方法は速度論(カイネティクス)に依存するため溶液のpHや濃度等を急激に変化させると準安定相が析出しやすくなります。安定相を得るためには、室温近くの反応であるため年単位の反応時間を必要とします。

B前項の出発物質において説明したように、モノマー原料を重合させ、非晶質ゲルを作り、これを目的とする温度・圧力条件で保持し粘土鉱物を結晶化させる方法です。この方法では、ゲル化の条件、ゲルの構造、結晶化の条件を適切に選ぶことにより、比較的多量の粘土鉱物の合成が可能となります。以下に述ぺるスメクタイトの工業生産はこの方法を基としています。

 以下では、代表的な粘土鉱物の合成方法として、@スメクタイト、Aカオリナイト、Bマイカ、C混合層鉱物、Dアロフヱン、イモゴライト、及び関違物質としてEハイドロタルサイト、Fゼオライトの「レシピ」をそれぞれ簡単に紹介したいと思います(表3)。なお本報告の最後に、関連する解説を列記しておきます。必要に応じて参考にしてください。

4.1. スメクタイト
 主として工業用資源として重要なベントナイトの成因を明らかにするために、天然でのスメクタイトの生成条件の解明に関連した鉱物学的研究が1930年代以降多数行われてきました。一方、スメクタイトの持つ特異な機能に注目した工業的生産も報告されています。
 スメクタイトの生成条件・相関係の解明を目的として、Na2O-MgO-Al2O3-SiO2-H2O系の合成実験が精力的に行われてきました。実験はスメクタイト組成の非晶質試薬(ゲル)を出発物質としています。出発物質と蒸留水(もしくは各種水溶液)との混合物を、圧力2000気圧以下、温度500℃以下の条件で、適切な保持時間処理することにより合成されます。合成されたスメクタイトの種類としては、パイデライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどが報告されているます。特にサボナイトは、圧力1000気圧、温度800℃の条件においても合成されています。また出発物質としてゲルの他に、ガラス、スメクタイト以外のアルミノケイ酸塩も用いられてきました。
 よりマイルドな条件(常圧近く、100℃以下)での合成方法としては以下の例があります。
(1)低濃度のマグネシウムおよびシリカ溶液から、pH9〜10でサポナイトを沈殿させる方法です。
(2)低濃度の水ガラスと塩化マグネシウム溶液との混合溶液を、温度90℃、1気圧の条件で数週間保持することによりスチーブンサイト、ヘクトライトを合成することができます。
(3)シリカゲルおよぴ水酸化マグネシウムにリチウムイオン、フッ素イオンを添加し、1〜7日間還流処理することにより、ヘクトライトを合成することができます。
工業的には、@大量合成が可能なこと、A合成条件が経済的なこと、B製品の特性が良好で安定なことが求められます。これらの条件を満足させる方法として、以下の方法が現在までに報告されています。
(1)硫酸マグネシウム・塩化リチウムを含む水溶液に、炭酸ナトリウム・水ガラスを含む水溶液を加えます。生じた沈殿物を含む溶液を、還流処理させた後オートクレーブで水熱処理します。反応終了後、ろ過・水洗して過剰の副生塩を除き、ヘクトライトを得ます。この方法は、英国Laporte社の商品「Lapornite」の製造方法として、実際使われていると考えられます。
(2)マグネシウム塩水溶液とアンモニア水溶液よりスラリーを作成します。このスラリーに、ケイ酸ソーダ水溶液を加えてゲルを作成します。このゲルをろ過・水洗して副生電解質を除き、水に分散させた後、リチウムイオン、アルカリ金属イオン、フッ素イオンを添加し、温度100〜270℃で水熱反応させて、ヘクトライトを合成します。
(3)硫酸マグネシウム水溶液にアンモニア性水ガラス水溶液を滴下した後、続いて硫酸アルミニウム水溶液を滴下して沈殿させます。生成沈殿物をろ過・水洗した後、アルカリイオンを加えてスラリーとし、300℃の水熟条件で反応させ、合成サポナイトを得ます。
(4)水ガラスと鉱酸から調整したケイ酸にマグネシウム塩を溶解させた酸性混合液に、アルカリ溶液を加えて沈殿させます。生成したMg-Si均質含水沈殿物を、ろ過・水洗により副生塩を除き、リチウムイオン、ナトリウムイオン、フッ素イオンを添加し、温度125〜300℃で水熱反応させて、ヘクトライトおよぴ3-八面体型マグネシウムスメクタイトを合成します。以上の合成は、Na2O-MgO-Al2O3-SiO2-H2O系において行われてきましたが、マグネシウムイオンの代わりに、遷移金属イオン(ニッケルイオン、コパルトイオン、亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオン)を含むスメクタイトの合成も同様な方法を適用することによりなされてきました。これらは、触媒特性、新規機能等の発現が期待されています。
 以上の方法による生成物は、全て低結晶性スメクタイトです。しかし、最近人エダイヤモンドの合成条件に相当する極端な合成条件を適用することにより、高結晶性(単結晶)スメクタイトの合成が報告されています。スメクタイト組成のガラスと蒸留水との混合物を、圧力55000気圧、温度1500℃の条件で処理することにより、大きさ数十ミクロンのスメクタイトが、高圧鉱物(コース石など)とともに得られました。合成条件より、スメクタイトは「含水ケイ酸塩メルト」の急冷にともなう生成物と考えられています。

4. 2. カオリナイト
 カオリナイト系粘土鉱物の合成の歴史は古く、19世紀後半に既にはじまっています。1950年代以降は、@相平衛条件の解明に関する研究、A低温での合成に関する研究、B天然の鉱物等を用いた合成に関する研究、C反応機構・カイネティクス解明に関する研究、D工業的大量合成法に開する研究が精力的に行われてきました。
 相平衡条件の解明に関する研究に関しては、共沈シリカ・アルミナゲルを出発物質として水熱合成実験(合成温度150〜450℃)が行われました。その結果、Al/Si比の変化によるべ一マイトとの共存、あるいは非晶質シリカとの共存が明らかにされてきました。さらにカオリナイトの高温相であるパイロフィライト、あるいは準安定相ハイドラルサイトとの関係も明らかにされてきました。
 低温での合成研究では、数ヶ月から数年の時間をかけて低緒晶度のカオリナイトの生成が報告されています。その基本となったは、室温におけるカオリナイトを含む系の溶解度図です。この図により「カオリナイトの析出平衛線」と「シリカ・アルミナゲル相の析出平衡線」との関係が判明し、カオリナイトの析出反応溶液濃度領城が限定されました。適正な反応溶液濃度を得るために、以下の方法が報告されています。@単純な溶液混合・濃度調整による方法、A結晶化の基となる層状結晶に他のイオンをゆっくりと導入するトポタキシャルな方法、B均一沈殿法(pHをゆっくり変化させる方法、加水分解法、Al-有機物錯体分解法)。
 天然の鉱物等を用いた合成に関する研究は、「天然でのカオリナイトの生成機糟の解明」・「工業的大量合成法の可能性の検討」として行われてきました。その基本方法は、@天然鉱物(モンモリロナイト、バーミキュライト、金雲母、長石、ゼオライト等)にAlイオン(塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム等)を添加して水熱処理(150〜350℃)する方法、A天然鉱物を塩酸水溶液を用いて水熱処理する方法です。
 反応機構・カイネティクス解明に関する研究は、鉱物の変質過程を理論的に説明することを目的としたものであり、上記の研究に密接に関係しています。非晶質アルミノシリケイト、カオリナイト等の鉱物に対する溶解速度・析出速度を考慮した反応速度論的考察がなされてきました。この研究は以下の多量合成法に密接に関係しています。
 工業的大量合成法は、「可塑性カオリナイト質粘土資源の枯渇化」に対応するものです。この研究に関しては、上記の研究をもとに次の注目すべき実験的研究があります。コロイダルシリカとアルミナゾルを理想的カオリナイト組成比に混合し、乾燥・仮焼した原料を出発物質にし、その原料・水比を変え、反応温度150〜300℃、反応保持時聞2時間〜2ヶ月の水熱処理した場合の一連の析出鉱物変化を明らかにした研究です。その中において、球状カオリナイト、板状カオリナイトの析出条件が詳細に検討されました。

4. 3. マイカ(雲母)
 マイカの合成は、その天然における生成条件・安定条件の解明と、工業材料としての応用に分けることができます。工業材料としては、電気材料からマイカセラミックスとしての機械部品・構造材料への展開、触媒担体、無機フィルムヘの用途開発が計られています。
 天然における雲母は、その構造中に水酸基を含むために水熱条件が必要とされます。ゲル、ガラスもしくは酸化物混合物を蒸留水と共に、温度900〜1000℃以下、圧力1000〜15000気圧の条件で処理することにより合成されます。対象となった雲母は、白雲母、黒雲母、金雲母、アンナイトなどです。
工業的には、安全面・経済面より高温高圧水熱条件は好ましくありません。天然雲母の結晶構造中の水酸基をフッ素イオンで同形置換されたフッ素雲母が工業的には合成されています。その製造法としては、@溶融法、Aインターカレーション法が用いられています。
 溶融法は、先の合成装置の項で述ぺたように、(1)ルツボ降下法(外熱法)、(2)内熱式溶融法の二つに大別できます。フッ素金雲母(KMg3AlSi3O10F2)を合成するには、目的とする組成比に、シリカ、マグネシア、アルカリ金属酸化物・フッ化物を混合し1400〜1500℃で溶解します。その後、徐冷し、結晶化させます。内熱式溶融法を用いた場合、80 kgの生成物を連続的に合成することも可能です。種結晶を用いたルツポ降下法を用いた場合には、大きさ10cm角の大型単結晶の合成が可能となります。フッ素金雲母以外の各種同形置換雲母の合成研究も報告されています。層間イオンのカリウムイオンを、リチウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムイオンで、八面体層イオンのマグネシウムイオンを、リチウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガンイオンなどで置換したフッ素雲母が合成されています。特に、層間イオンがリチウム、ナトリウム、ストロンチウムの雲母は、スメクタイトと同様に水により膨潤する「膨潤性雲母」として知られています。
 インターカレーション法は、先の溶融法の持つ欠点、@不純物として30〜40%のガラスを含むこと、A大きなエネルギーを必要とすることを克服する方法です。タルク(滑石)とフッ化リチウム、もしくはタルクと珪フッ化ソーダを所定量混合し、磁性ルツボに入れ、700〜800℃で1〜2時間焼成することにより、膨潤性マイカが合成されています。その生成は、タルクの端面からアルカリイオンがインターカレートし、膨潤することによると解釈されています。

4. 4. 混合層鉱物
 イライト/スメクタイト混合層鉱物に代表される混合層鉱物は、2種あるいは3種の異なった層状鉱物の単位構造層が積層した興味深い粘土鉱物であり、現在までに多種多様の混合層鉱物の報告があります。イライト/スメクタイト混合層鉱物は、@続成作用の環境下で広範囲に生成すること、Aその性質が続成作用の進行に伴って系統的に変化することの報告があります。また地熱帯においても、スメクタイトからイライトまで混合層鉱物を経て連続的に変化することも明らかにされています。このように混合層鉱物は、多種多様の環境(風化作用、続成作用、熱水変質作用など)で生成しています。従って合成は、主としてその生成条件を明らかにするために行われています。以下では、比較的合成実験がなされているマイカ/スメクタイト混合層鉱物の合成を中心として紹介します。
 マイカ/スメククイト混合層鉱物の合成に際しての仮説としては、@混合層鉱物は、マイカからスメクタイトに風化等の種々の変質の過程で生成する、A混合層鉱物は、スメクタイトからマイカに続成作用などの過程で生成する、B混合層鉱物は、マイカ、スメクタイト以外からの鉱物もしくは非晶質物質から生成する等を上げることが出来ます。
 マイカからの変質合成案験としては、(1)マイカを硝酸リチウムと300℃で反応させる方法、(2)セリサイトを650℃以上の温度で脱水処理した後に、塩酸または硫酸等の酸で煮沸処理する方法、(3)先と同様に加熱脱水したセリサイトを、塩類と共に煮沸処理する方法が報告されています。これらの方法により、混合層鉱物が合成されています。
 スメクタイトからの合成は、モンモリロナイト、パイデライトを、200〜500℃の水熱条件で処理することにより混合層鉱物の合成が行われています。またスメクタイトの層間イオンを、カリウム、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウムイオンなどに置換した後、300〜500℃の水熱条件でレクトライトの合成が行われ、その生成の陽イオン依存性等が詳しく議論されています。
 ゲル等の非晶質物質を水熱処理することにより混合層鉱物の合成が行われています。たとえば、マイカ一スメクタイトの中間組成のゲルを350〜450℃の水熱条件で処理した場合、合成保持時間の増加に伴い、スメクタイトから混合層鉱物への変化が明らかにされています。また、カオリナイト、パリゴルスカイト、セピオライトに種々の塩化物溶液を添加し水熱処理することにより、混合層鉱物も合成されています。
 以上のマイカ/スメクタイト混合層鉱物以外にも、緑泥石/スメクタイト混合層鉱物、カオリナイト/スメクタイト混合層鉱物、緑泥石/パーミキュライト混合層鉱物なども合成されており、その成因解明が検討されています。
 一方で、混合層鉱物は良質な物が少量しか天然には産出せず、残念ながら工業材料としては省みられていません。しかし、混合層鉱物は「ケイ酸塩ナノシート」が積層した興味深い化合物であり、その積層構造等を制御することにより新たな機能の発現が期待されます。そのような観点から、最近Si-Mg-Al系複合含水酸化物のスラリーを150〜350℃の水熱条件で処理することにより、蛇紋石/サボナイト混合層鉱物が合成されており、スメクタイト系新素材の一つとして期待されています。

4. 5. アロフェン、イモゴライト
 アロフェンは、X線的には非晶質のアルミノケイ酸塩で、火山ガラスを主とする堆積物の風化生成物として天然に広く分布しています。直径5 nm程度のフラーレンと同様な中空球状粒子です。一方、イモゴライトは、直径2 nm程度のアルミノケイ酸塩ナノチューブです。しかしながら、これらの構造は未だ完全には明らかでなく、生成機構・安定領域、物理的・化学的性質も充分には判明していません。従って、純度の高いこれらの試料の合成は必要とされています。
 アロフェンの合成は、オルトケイ酸エチルの加水分解による単量体ケイ酸溶液とアルミニウムイオンを含む溶液に水酸化ナトリウムを添加して、還流冷却器をつけて沸点近くで数日間加熱することにより行われます。ただし、ケイ酸溶液は2 mM以下という希薄溶液にする必要があります。この濃度以上では、Siの重合反応が進行してアロフェンの生成に必要なヒドロキシアルミノケイ酸イオンの生成が阻害されると考えられています。この方法では、大量のアロフェンの合成は困難です。この欠点を補うために、以下の方法が報告されています。その概略は、塩化アルミニウム溶液と塩酸との混合液に水ガラスの希釈溶液を加え、さらに尿素を添加し沸点近くで数日間保持する方法です。この方法では、尿素の沸点近くでの熱分解による均一中和反応によりアロフェンが合成されます。
 イモゴライトの合成方法は、以下の通りです。単量体ケイ酸溶液(1.4 mM)と、塩化アルミニウム溶液(2.4 mM)とを激しく撹拝しながら水酸化ナトリウム溶液をゆっくり滴下し溶液のpHを5とした後、ただちに溶液1 lあたり1 mmolの塩酸と2 mmolの酢酸を添加して沸点近くで加熱することにより、イモゴライトを合成する方法です。しかしながら、この方法では低塩濃度、高イモゴライト濃度のゾルを得ることが困難です。この点を補うために、有機のケイ素およぴアルミニウム化合物を用いる以下の方法が報告されています。オルトケイ酸エチルとアルミニウム一s一ブトキシドの混合物を希過塩素酸中で加水分解させ加熱する方法です。

4. 6. ハイドロタルサイト
 ハイドロタルサイト(組成式 [Mg6Al2(OH)16][CO3・4H2O])は、陰イオン交換能を有する粘土鉱物として知られています。ブルーサイト基本層の一部をアルミニウムが置換することにより正電荷を有し、電気的中性を保つために、中間層に陰イオンを取り込むことが可能となります。ハイドロタルサイトは、共沈法により容易に合成されます。炭酸ナトリウム溶液に、硝酸マグネシウムと硝酸アルミニウム混合水溶液を窒素雰囲気下でpH調整しながら滴下し、滴下後加熱熟成する事により合成されます。
 ハイドロタルサイトは、分類上は層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide)に属します。その組成は以下の一般式で表されます。
 [Mg2+1-xM3+x(OH)2]x+[An-x/n・yH2O]x-
ここで、M2+は、マグネシウム、ニッケル、コバルト、マンガン、亜鉛などの2価金属イオン、M3+は、アルミニウム、鉄、マンガン、クロムなどの3価金属イオンです。上に述ぺたように、2価金属イオンの一部を3価金属イオンが置換することにより、正に荷電した基本層と負の電荷を持つ中問層からなる層状構造をとります。イオン交換可能なAn-は、水酸基、塩素、硝酸基、炭酸基、硫酸基などのn価の陰イオンです。これらの合成も基本的には、ハイドロタルサイトと同様に共沈法が用いられます。陰イオンを含むゲスト溶液に、2価金属イオンおよぴ3価金属イオンを含む混合溶液を滴下・熟成することにより合成されます。

4. 7. ゼオライト
 ゼオライトの合成は、天然ゼオライトの生成条件の解明や鉱物学的研究を目的と共に、新規ゼオライトの創製・特性の向上・応用開発を目的として盛んに行われてきました。多くのゼオライトは、準安定相として合成されています。従って従来の平衡論による合成にとらわれることなく、原料組成・原料の種類・原料の形態・混合方法・pH・撹拌条件・反応容器などの因子を積極的に制御し、非平衛状態での合成を行ったことに特徴があります。この考え方は先に述ぺた一連の粘土鉱物の合成に対して重要な指針を与えると考えられます。
 典型的なゼオライトの合成は、反応性の高く、非晶質で強いアルカリ性の濃厚なヒドロゲルを、オートクレーブ中で水熱処理(〜250℃)することにより行われます。この場合の原料としては、シリカ源としてはケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ、アルコキシドなど、アルミナ源としては水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルコキシドなど、鉱化剤としてアルカリ金属の水酸化物、フッ化物、およぴ水が用いられます。この場合、当然ながらシリカ・アルミナはゼオライトの骨格として必要な成分です。一方、鉱化剤は、シリカ・アルミナを溶液中に溶解させる共に、骨格のもつ負電荷を打ち消すためにも必要となります。
 高シリカゼオライトの合成に際しては、特徴として鋳型分子・テンプレートとよぱれる有機化合物が加えられます。四級アンモニウムカチオンや有機アミンなどが広く用いられてきました。鋳型分子の設計により新規な構造・機能制御の発現が期待されています。

5.まとめ
 本稿を参考に、各自の研究目的に応じて、まず最適な「道具立て」をしてください。時には包丁を研ぐように、必要に応じて「道具」も工夫する必要があります。合成装置の容積・材質もさることながら、その場観察用、天然条件により近い「溶液流通系」なども考える必要があるかもしれません。次に「道具」が決まれば、「料理の味」を大きく左右する「素材」選びです。当然道具と同様に最適なものを選ぴ出さねばなりません。たとえば、工業的観点からは、「大量合成可能」・「安価」な物が必要とされるでしょう。また「ある特定地域の過去に起こった自然現象」の再現一には、その土地独自の材料一天然に産する鉱物一を使う必要もあるでしょう。最後は、「料理人」としての最大の腕のみせどころである「レシピ」作りです。全ての段階において試行錯誤が必要なことはいうまでもありません。至高の「料理」を作ってみてください。道具と材料とレシピをたくみに使う「職人」の登場を心待ちにしています。

参考文献
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