7.土壌中の粘土鉱物

南條正巳
東北大学大学院農学研究科
〒981-8555 仙台市青葉区堤通雨宮町1-1
e-mail: nanzyo@bios.tohoku.ac.jp


1.はじめに
2.どの粘土鉱物はどの土壌に含まれるか
  2.1 カオリナイト
  2.2 スメクタイト
  2.3 アロフェン、イモゴライト
  2.4 2:1〜2:1:1型中間種鉱物
  2.5 ハロイサイト、イライト、バーミキュライト、クロライト
3.土壌環境と交換性イオンの状態
4.わが国の土壌と粘土鉱物
5.おわりに
  文 献

1.はじめに
 土壌は水、空気と並んで生物を育む身近な物質です。その土壌は無機物(サイズはレキ〜粘土)と有機物(粗大有機物、腐植、既知有機化合物)の複合体で、そこに植物、微生物、動物が生育し、それらの相互作用の結果として存在しています。土壌の定義の模式図を注1に示しました。粘土鉱物は腐植と共に土壌中で最も機能性の高い成分のひとつです。土壌中の粘土鉱物は無機、有機のイオンを一時的に保持したり、それらのイオンを他のイオンと交換しながら再放出したりします。そして、このイオンを保持する反応は、イオンの種類と粘土鉱物の組み合わせによって選択性の高いものから低いものまで多様です。これらのような化学的機能に加えて、粘土鉱物は土の中の水の流れに影響したり、粘土の集合体が作るすき間に保持した水を植物や他の生物に供給するなどの物理的機能も持っています。
 ここでは主に「どの粘土鉱物はどの土壌に含まれるか」について概説します。土壌が出来上がる過程には図1に示すように数種類以上の因子(土壌生成因子と呼びます)が複雑に関係しています。したがって、土壌の分布(図2)も各地点における土壌生成因子に強く影響されます。このような土壌の粘土鉱物組成を理解するには環境の異なる陸地を広く見ることが有効です。そして、土壌の分類とその分布に関する情報が必要です。また、粘土鉱物の化学構造や生成機構も重要ですが、これらはこの講座シリーズの中にすでにあります(上原, 2000;河野, 2001)。ただし、土壌中の粘土鉱物は多くの場合混合物で形や結晶度も様々です。土壌の分類法はいろいろありますが、最近世界的に広く使われる方法の一つとして米国農務省の方法を用います。その概要は分類名の由来と合わせて注2に示しましたので適宜参照して下さい。

2.どの粘土鉱物はどの土壌に含まれるか
 土壌は断面の形態と特性に基づいて分類されますが、その特性の中にはその土壌に含まれる粘土鉱物の性質を強く反映したものがあります。そのような土壌はカオリナイトに富む土壌(オキシソルやアルティソルの一部、注2)、スメクタイトに富む土壌(バーティソル、モリソル、他)やアロフェン、イモゴライトに富む土壌(アンディソル、スポドソルのスポディック層)などです。そこでこれらのような土壌分類との関係が深い粘土鉱物をまず先に取り上げます。次に、あまり土壌分類とは関係が強くない粘土鉱物に進みます。

2.1 カオリナイト
 カオリナイトは安定性の高いケイ酸塩鉱物で、風化の強く進んだ熱帯の土壌に多く含まれます。そのような土壌の一つはオキシソルで、アフリカ中央部とブラジルに集中して広く分布します(図2、表1)。その他、面積は小さいですが、東南アジアなどにも分布します。この土壌は粘土含量当たりの陽イオン交換容量(CEC)が小さいことで特徴づけられ、このことは即ちカオリナイトに富むことに基づくものです。そして、この土壌の他の成分はゲータイト、ヘマタイト、ギブサイトなどの酸化物、水酸化物鉱物や石英などです。長石や2:1型粘土鉱物などの易風化鉱物はあまり含まれていません。
 この土壌はたいへん年代が古く、長期間の溶脱を受けた残留物から成り、表層に多少の腐植は含まれますが、土層分化はあまり強くありません。そして、カオリナイトと酸化物・水酸化鉱物から成る凝集体の安定性が高いために分散しにくく、かつ、膨潤収縮も小さいため、土層内の粘土移動はあまり起こりません。下層にはしばしばストーンラインと呼ばれるレキ層があり、その上下の土層は不連続です。このようなことからオキシソルは地質時代を通じて複数回の堆積過程を経ていると考えられています。

 オキシソルと並んでカオリナイト含量の高い土壌はアルティソルです。この土壌は分類上アリディソルの次にキーアウトされ(注2)、その基準の要点はアルジリック層(粘土集積層、図3)を持ち、その塩基飽和度(CECに対する交換性Ca2+, Mg2+, K+, Na+の合計電荷量の割合)が低いことです。しかし、カオリナイトに富むアルジリック層には配向粘土の性質(図3参照)は見られず、粘土含量が下層で増加するだけです。このような土層はカンディック層と命名され、1987年に米国農務省の土壌分類に取り入れられました。このようなカンディック層を持つアルティソルはオキシソル周辺の斜面に分布し、その生成機構として(1) 粘土の移動集積(粘土・酸化物凝集体の分散が必要)とその後の皮膜構造の消失、(2) 表層における粘土の溶解、(3) 斜面における粘土の選択的流出、(4) 表層における粗粒物の堆積などが考えられますが、決定的なことは明らかではありません。
 以上の他にカオリナイトは少量であれば様々な土壌に含まれます。一般にオキシソルは安定地形面に、アルティソルはその周辺の斜面に、さらに侵食の進んだ急斜面にはずっと下層の比較的未風化の母材が露出してインセプティソルのような若い土壌が分布しますが、そのような若い土壌にも上流にカオリナイトに富む土壌があればそこから侵食されたカオリナイトがインセプティソルに混入することも考えられます。
  以上のようにこの土壌には風化して植物の養分を放出するような鉱物はほとんど含まれておらず、開墾して農地とするには多量の施肥が必須です。粘土のCECが小さく腐植含量も少なく、植物養分となる陽イオンを保持する能力は強くありません。しかし、カオリナイトと三二酸化物の作り出す凝集体は安定で透水性、保水性は比較的良く、農地としての物理的性質は良好とされています。

2.2 スメクタイト
 スメクタイトの顕著な性質は大きな膨潤収縮を示す点です。この特徴はスメクタイトに富む土壌中で強く発揮され、他の土壌と異なる独特の断面形態を示し、その名はバーティソルです。しかし、この膨潤収縮の繰り返しによる顕著な性質が発現するためにはスメクタイト含量が多いだけでは不十分で、乾燥と湿潤を繰り返す気候条件が必要です。スメクタイトに富む土壌はわが国にもありますが、わが国の土壌は通年湿潤条件にあり、わが国のスメクタイト質土壌はグライ低地土などとして存在し、バーティソルにはなりません。大部分のバーティソルはスメクタイトを多量に含みますが、スメクタイト以外の粘土鉱物を含むバーティソルも少しあります。
 バーティソルはインド西部、スーダン東部、米国テキサス州南部、オーストラリア北東部などに分布し、氷に覆われていない陸地の2.4%に相当します(表1)。腐植の含量は中程度で、多くの場合A層は黒色を示します。乾季には乾燥により土壌に亀裂が入り、その亀裂の幅は1cm 以上に及びます。収縮は3次元的で下向きにも起こりますが、目に見えやすいのは横方向の収縮です。雨季になると雨水は表面にも浸潤しますが、雨が強ければ亀裂の底部に多く流入します。そして、膨潤は亀裂の底部で強く起こり、膨潤しつつある部分と水の浸潤が遅れて膨潤が遅れた部分との間に滑り面(スリッケンサイド)が形成されます。結果的に膨潤圧は上部に向かい、その圧力の大きさは位置によって異なるため表面にはギルガイと呼ばれる凹凸が形成されます。長年の間にはスリッケンサイドが多方向から交差し、くさび形の構造体が形成され、このような過程が繰り返されて土層は自然に混合される傾向にあります。
 スメクタイトは後述の例外(スポドソルE層)を除けば、一般的には排水があまり良くなくケイ酸や易溶性陽イオンが溶脱しにくい地域に分布します。その理由はその場で生成したか、あるいは、他で生成して洪水等により運搬されてきたものが長く存続するためです。バーティソルもこのような条件下にあります。モリソル、アルフィソル、インセプティソル、エンティソルなどでも、スメクタイトに富むものは類似の条件下にあります。そして、スメクタイトの内容も多様です。米国中央平原のモリソルに含まれるスメクタイトはイライトとの不規則混合層鉱物が多いとの報告があります。この他、鉄に富む塩基性岩の母材からは鉄の多いスメクタイト、雲母やクロライト(4面体置換が多い)の多い母材からはバイデライト、土壌溶液中のAl、Si、Mg濃度が高い場合にはモンモリロナイトが生成すると推測されます。ケイ酸や易溶性陽イオンの溶脱抑制は乾燥気候によっても起こると見られ、アリディソルの一部にもスメクタイトに富む土壌があります。
 以上のようなスメクタイトの分布と異なる事例として、スポドソルのE層があります。スポドソルは砂質で透水性の高い母材に生成することが多く、しかもE層は溶脱を強く受けて漂白された層なので、含量は高くありませんがスメクタイトが含まれます。しかもスポドソルのE層はpHが4〜5と低く、普通ならスメクタイトやバーミキュライトの層間に重合ヒドロキシAlイオンが保持された2:1〜2:1:1型中間種鉱物に変化しやすい条件です。しかし、そのようにはならず、通常のスメクタイトの性質を維持しています。その原因として、キレート能を持つ可溶性有機物によるAlの洗浄効果が挙げられます。このスメクタイトの起源は母材中の雲母に由来するとの見解があります。スポドソルは層位分化の強い土壌(図4)でE層の下の粘土鉱物は後述のようにさらに別のものになっています。
 スメクタイトに富む土壌はスポドソルのE層を除けば、一般にCECが大きく植物養分となる交換性陽イオンを豊富に持ち、表層には腐植がある程度集積し、pHも中性付近であることが多く、リン酸イオンの固定力も弱く、作物生産上の化学的性質は優れています。しかしながら、スメクタイト含量が高すぎる土壌は排水不良で粘着性、可塑性が強く作業性が悪いなど物理的には必ずしも扱いやすい土壌ではありません。

2.3 アロフェン、イモゴライト
 アロフェンとイモゴライトは層状ケイ酸鉱物とは異なる構造、形態、特性を示します。アロフェンの形態は中空球状、イモゴライトの形態は中空管状で、カオリナイトよりもさらにSiの少ない鉱物です。アロフェン、イモゴライトは風化の進んだアンディソルのBw層に多く含まれる他にスポドソルのBhs、 Bs層(層位名は図3参照)にも含まれます。アンディソルは火山の近傍に分布することが多く、その面積は氷に覆われていない陸地の0.7%と見積もられています(表1)。一方、スポドソルは米国北東部、北欧に多く分布し、同陸地の2.5%強を占めます。これらを合計しますと約3%強となり、アロフェン、イモゴライトは、その含量はともかく、その分布は少なくありません。なお、アンディソルの定義は活性(リン酸イオンとの反応性が高い)Al、Fe含量が高いことです。アンディソルの中には後述のようにアロフェン、イモゴライト含量が少ない代わりにAl-腐植複合体に富むものがあります。
 アロフェン、イモゴライトは腐植に富むA層よりも腐植含量の少ないBw層に多く含まれます。アロフェンのAl/Si原子比は1〜2ですが、土壌中では多くの場合アロフェンのAl/Si原子比はイモゴライトと同じ2に近い値を示します。アンディソルの生成過程では降灰後水食により移動・再堆積したり、土壌化後も風による運搬・再堆積の可能性がありますが、基本的にはその近傍の火山に由来する火山灰特に火山ガラスから生成したものです。このようにアロフェン、イモゴライトはAlに富む鉱物ですが、その源である火山ガラスは玄武岩質火山放出物に含まれる有色火山ガラスであってもSiO2含量55%、Al2O3含量20%で、安山岩質〜流紋岩質火山灰に含まれる無色火山ガラスのSiO2含量は74-78%、Al2O3含量は13-15%とSiO2含量の方が多くなっています。したがって、火山ガラスからアロフェン、イモゴライトが生成するためには多量のSiとさらにNa+、 Ca2+などが溶脱することになります。実際に火山灰地帯を流下する河川水のSi含量はそれ以外の河川水より高い傾向です。そして、このような溶脱が起こるためには湿潤気候と排水良好な条件が必要です。アロフェン、イモゴライトは主に台地、丘陵地に堆積した火山放出物中に生成し、排水不良な低地や沼沢地では生成しにくい傾向があります。
 台地・丘陵地にあっても火山ガラスからアロフェン、イモゴライトが生成しにくい条件があります。それは多量の腐植の存在です。腐植の多いA層では火山ガラスから溶出したAlは、地点によってその度合は異なりますが、Siよりも腐植と結合してAl-腐植複合体になりがちです。このようなAl-腐植複合体に富むA層が厚く発達しますとアロフェン含量の少ないアンディソル(非アロフェン質アンディソル)となります。非アロフェン質アンディソルはしばしば2:1〜2:1:1型中間種鉱物を含み、その他の性質もアロフェン質アンディソルと異なる点があります。たとえば、非アロフェン質アンディソルは交換性Alを多量に含み酸性が強いのに対して、アロフェン質アンディソルは交換性Alをほとんど含まず弱酸性であることです(Shoji et al., 1993)。
 アンディソルはアロフェン質であっても非アロフェン質であっても固相率が小さくて軽くふかふかし、透水性と保水性がよく、畑土壌として利用するには優れた物理性をもっています。一方、リン酸固定力が強い、養分となる交換性Ca2+、 Mg2+、 K+の含量が低い、非アロフェン質アンディソルは交換性Al含量が高いのでAl過剰障害が出やすいなど化学的性質はよくありません。しかし、これらの化学的の問題点は比較的改良しやすく、良好な畑土壌として利用されています。
 アロフェン、イモゴライトはアンディソルの他にスポドソルのスポディック層(図3)にも存在します。このアロフェン、イモゴライトも土壌中で自生したものです。スポディック層中のアロフェン、イモゴライトは、上層から可溶性Al-腐植複合体として移動中にAl/C比が増加して移動性を失い、有機物が分解して放出されたAlがSiと結合して生成すると考えられます。さらにこの過程には有機物分解に伴って生成した炭酸によって母材の風化が促進されて溶出したAl、 Si が沈殿するというメカニズムも加わるのではないかとの論議もあります。アンディソルのA層でもAl-腐植複合体が生成しますが、スポドソルと異なりその溶解性が低く、下方にはほとんど移動せず、A層に集積します。

2.4 2:1〜2:1:1型中間種鉱物
 2:1〜2:1:1型中間種鉱物はアルティソル、非アロフェン質アンディソルなどの酸性土壌に広く分布します。この鉱物の特性が目レベルで直接的に分類基準となっているものはありませんが、アルティソルの塩基飽和度が低いという基準はこの鉱物の特性にも対応します。ただし、酸性土壌でもスポドソルのE層では上述のように2:1〜2:1:1型中間種鉱物にはなってはいません。
 この鉱物はスメクタイトまたはバーミキュライトの層間に重合ヒドロキシAlイオンが保持されて、CECが減少し、膨潤性が弱くなり、リン酸イオンとの反応性が高まり、交換性Al含量が高く、作物に酸性障害を引き起こします。一般に、この鉱物に富む土壌は植物養分となる交換性Ca2+、 Mg2+、 K+の含量も低く、肥沃度の低い土壌です。

2.5 ハロイサイト、イライト、バーミキュライト、クロライト
 これらの粘土鉱物は広範な土壌に含まれますが、目レベルの分類基準に直接的に関係するものはありません。ファミリーレベルではこれらの鉱物に富む土壌として分類名に反映される場合があります。
 ハロイサイトは火山灰母材の土壌で排水が制限されたり、半乾燥気候下で土壌溶液が濃縮される場合に生成する傾向があります。ハロイサイトはK+やNH4+に親和性が高く、その機構は明らかではありませんが、自然状態で交換性K+を多量に保持する例が知られています。
 イライトも多くの土壌に含まれる粘土鉱物で、多くの場合は母材から継承されたと見られていますが、土壌中での生成の可能性も排除できないとされています。アルフィソル、インセプティソル、エンティソルなどで主要粘土鉱物となっている例があります。  バーミキュライトは多くの場合雲母の風化物であると考えられます。3八面体型バーミキュライトは3八面体型雲母と同様に土壌中ではあまり安定ではありません。
 3八面体型クロライトは蛇紋岩由来土壌に含まれます。その起源は母材に由来すると見られ、土壌中での安定性は高くありません。上述の2:1〜2:1:1型中間種鉱物は土壌クロライトとも呼ばれ、2八面体型で、アルティソルなどの酸性土壌に含まれ、その条件ではかなり安定です。

3.土壌環境と交換性イオンの状態
 以上では粘土鉱物のうち主にケイ酸塩層の部分に注目してきましたが、ここでは粘土鉱物の交換性イオンと土壌の関係を見ていきます。粘土鉱物の交換性イオンはケイ酸塩層の部分よりも土壌環境の変化に敏感で、土壌管理においても土壌分類においても粘土鉱物組成にはあまり拘らず、イオン交換基の種類や交換性イオンの組成に着目する場合があります。
 イオン交換基の種類と交換性イオン組成は図4に示した4つに区分することができます。土壌中のイオン交換基には腐植のカルボキシル基や酸化物、水酸化物鉱物表面の水酸基などもありますが、図4では省略しています。図4の (1)〜(3) は層状ケイ酸塩鉱物の場合で、(4) はアロフェン、イモゴライトの場合です。土壌中の交換性イオン組成は土壌のpHと土壌溶液中の溶存塩類の影響を強く受けます。pHが低いと図4(1)のように交換性Al3+の割合が増加します。養分となるCa2+、 Mg2+、 K+の占める割合は小さくなります。Al3+は多くの植物に悪影響を及ぼします。農耕地や中性付近のpHでは図4(2)のようにAl3+の割合はごく小さく、Ca2+、 Mg2+、 K+などがイオン交換基を占め、作物生育には好適です。乾燥地土壌ではしばしばNa塩が溶脱されず土壌中に集積している場合{図4(3)}があります。Na+は動物にとっては必須ですが、多くの植物には必要ではありません。Na+を多く含む土壌には2つのタイプがあり、一つは交換性Na+の割合が高い場合(ソディックな性質)で、もう一つは交換性Na+の割合が高く、かつ、Na塩含量も高い場合(サリックな性質)です。ソディックな土壌では粘土の分散による物理性の悪化や作物生育の悪化が問題になり、サリックな土壌ではわずかに耐塩性の植物が生育できるのみで作物生産は困難になります。粘土含量や植物のNa+耐性によって変動はありますが、CECに対する交換性Na+の当量比が約15%以上になるとNa+の悪影響が出るとされています。ソディックまたはサリックな性質を持つ土壌は中央アジア、オーストラリア東部、南米南部の内陸などに分布します。変異荷電特性を示すアロフェン、イモゴライト{図4(4)}の等電点はpH6付近にあり、自然状態のpHは等電点付近にあり、電荷の発現量はわずかです。CECは通常pH7で1 mol L-1の塩を使って測定されるので変異荷電土壌では現場の状態に比べて過大評価になり、酸性側では塩基飽和度が低くともpHは普通あまり低くなりませんし、交換性Al3+もあまり発現しません(2.3参照)。
 米国農務省の土壌分類では交換性イオンの状態が目レベルの基準に使われており、それは塩基飽和度としてアルティソル、モリソル、アルフィソルの定義に使われています。アルティソルは実際の定義はもっと詳細に数値で決められていますが、概要は図4(1)のような交換性イオンの状態、モリソルとアルフィソルは図4(2)のような交換性イオンの状態にあります。また、サリック層の存在はアリディソルの定義にも使われており、ソディックな性質は間接的に大群レベルの分類基準に関係します。これらの土壌の分布面積はいずれも氷で覆われていない陸地の5%以上を占めています。この他にも交換性イオンの状態は米国農務省の土壌分類の随所に使われています。
 農耕地土壌における交換性イオンの状態はCa2+:Mg2+: K+の当量比が約7:2:1の状態が好適です。図4(1)の状態にある酸性土壌は炭酸カルシウムや苦灰石、カリ肥料などを施与して改良する必要があります。また、図4(3)の状態にあるソディックやサリックな性質を持つ土壌は、たとえば、CaSO4などの施与と適切なかん排水システムの設置による改良が必要です。また、アロフェン、イモゴライトの持つ変異荷電は塩類濃度が高いとそれらの保持量も増加しますが、薄い炭酸溶液である雨水が当たりますとイオン交換基としての機能が減少するので栄養塩類は溶脱されやすい傾向があります。

4.わが国の土壌と粘土鉱物
 わが国の地形は急峻で侵食と堆積そして火山活動の影響が強く、概して若い土壌が多く分布します。林野と農耕地では別の方式で土壌が分類されていますが、ここでは農耕地土壌分類を用います。農耕地土壌分類は国土3780万haのうち約500万haをカバーするだけですが、低地から山地までの広く扱えるためです。森林面積は農耕地の約5倍ありますが、その約3/4は褐色森林土です。農耕地土壌分類は1995年に第3次改訂版が公表され、土壌は24種類の土壌群に分けられています。この24の土壌群は4種類のグループとその他に大別されています。4種類のグループとは有機質土壌グループ、黒ボク土壌グループ、低地土壌グループ、陸成土壌グループです。有機質土壌グループと低地土壌グループは図5の低地に主として分布し、これらの2つは前者は有機質、後者は無機質と土壌を構成する物質の主な内容から区別されます。黒ボク土壌グループと陸成土壌グループは主に台地・丘陵地と山地に分布し、前者は活性Alに基づく特性が顕著なので区別できます。
 低地土壌グループの母材は主に洪水堆積物として供給されます。その粘土鉱物の大部分は各種層状ケイ酸塩鉱物の混合物ですが、その組成は上流の地質や堆積過程に影響を受けます。たとえば東北地方の事例では、流速の速い扇状地では粘土鉱物の大きさや性質による分級はほとんど受けず、同じ扇状地内の粘土鉱物組成は同様ですが、上流地質の異なる別の扇状地では粘土鉱物組成も異なることが認められています。下流の蛇行帯になりますと流路に近く流速の速い自然堤防地帯では粒径の大きいクロライト、ゼオライト、カオリナイトが、流速の遅くなる後背湿地ではスメクタイトが優勢になる傾向が認められています。大洪水は数十年ごとに繰り返されてきたと見られ、埋没した過去の表層が土壌断面内に観察されることもあります。しかし、この程度の期間では扇状地、蛇行帯とも新旧堆積物中の粘土鉱物組成にあまり変化が認められないのが普通です(三枝, 1978)。
 黒ボク土壌グループは火山灰が母材となって生成した土壌で、定義に使われる基準は若干異なりますが、実質的に上記のアンディソルとほぼ同じものです。粘土鉱物組成から見ますと上記と同様にアロフェン質と非アロフェン質の違いによる土壌特性の違いがあります。黒ボク土壌グループの中では非アロフェン質黒ボク土を最初にキーアウトするのでこの分類は粘土鉱物組成に対応したものになっています。わが国におけるアロフェン質の黒ボク土壌グループが分布する主な地域は北海道南東部、青森県東部から岩手県北部、関東地方、中部地方、中南部九州です。これに対して非アロフェン質黒ボク土の主な分布地域は岩手県南部から宮城県北部、東海地方、山陰地方です。
 陸成土壌グループ(農耕地)の中で分布面積が広く、特徴の強い土壌は赤色土、黄色土です。これらは酸性土壌で上記のアルティソルに近い性質を示しますが、アルジリック層の特徴はあまり強くは認められず、粘土鉱物はほとんどが混合物で主要成分は2:1〜2:1:1型中間種鉱物またはカオリン鉱物となっています。

5.おわりに
 ここでは土壌中の粘土鉱物について大幅に簡略化して記述しました。たとえば、図2の土壌の分布図ですが、この図に基づいて現地に行くとその土壌に出会う確率は高いですが、すぐにその地点に到達するかどうかは疑問です。実際の土壌は地形に応じて異なるものが細かく入り組んで分布することが多いためです。また、近年土壌に対する人為の影響は急速に増大し、地形の人工改変も進んでいます。しかし、快適な環境の維持と産業活動の発展を両立させるためにはこれまでに集積された土壌と粘土鉱物の基礎的知見が必要な場面は少なくないと想像します。ここでの文献引用は最小限ですが、さらに詳細が必要な場合には、世界の土壌についてはAllen (1989)、 Soil Survey Staff (1999)、 Sumner (2000)、わが国の土壌については本誌、Clay Science、 日本土壌肥料学雑誌、Soil Science and Plant Nutrition、 ペドロジスト などの諸雑誌や専門書を参照して下さい。

文 献
上原誠一郎(2000)粘土の構造と化学組成,粘土科学,40,100-111
河野元治(2001)粘土鉱物の生成,粘土科学,40,197-211
三枝正彦(1979)水系と粘土鉱物,ペドロジスト,23,11-22
Allen B.L. (1989) Mineral occurrence in soil environments, (J.B. Dixon and S.B. Weed eds., Minerals in Soil Environments, 2nd ed.) 199-278, Soil Science Society of America, Madison, Wisconsin, USA.
Shoji, S., Nanzyo, M. And Dahlgren R.A. (1993) Volcanic Ash Soils - Genesis, Properties and Utilization, Elsevier, Amsterdam-London-New York- Tokyo, 288p
Soil Survey Staff (1999) Soil Taxonomy, A Basic System of Soil Classification for Making and Interpreting Soil Survey, 2nd ed., U.S. Government Printing Office, Washington, DC 20402, 869p.
Sumner, M.E. (2000) Handbook of Soil Science, CRC Press, Boca Raton-London- New York-Washington, D.C.
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