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CD-ROMテキスト発刊に寄せて
日本測地学会は,1954年に設立され,2004年に50周年を迎えました.測地学とは地球の形と大きさ,それに地球重力場を正確に求め,さらにそれらの時間的変化を明らかにする学問です.この50年間に,測地学をとりまく環境は大きく変化しました.日本測地学会が発足した当時は,今日のような衛星測地技術はまだ生まれておりませんでしたので,地上における測地測量に加え,重力計,傾斜計や伸縮計などの地上観測装置で得られた観測データを中心として測地学の研究が行われてきました.測地学の重要な課題の1つは,地震や火山活動に関連した地殻変動の研究であり,測地学会は,地震学会や火山学会と長年にわたり協力しながら,この分野の研究発展に貢献してきました.現在,日本学術会議のもとに,測地,地震,火山の各専門委員会が設けられており,この3つの専門委員会が連合して固体地球物理学研究連絡委員会を構成しています.このように,測地・地震・火山の研究分野は密接な連携を保っています.また,本教科書に述べられているように,超伝導重力計,絶対重力計や長スパン・レーザー伸縮計などにみられる地上観測技術の長足の進歩は,測地学的な観測精度を大幅に向上させました.
一方,1957年に人類初の人工衛星であるスプートニク1号が打上げられましたが,その後,1960年代の終わりから着手された月レーザー測距(LLR)の経験を経て,衛星レーザー測距(SLR),超長基線電波干渉計(VLBI),全地球測位システム(GPS)などの宇宙・衛星測地技術が次々に開発され,20世紀の終わり頃には,地球を回る人工衛星や地球からはるか離れたクェーサーを基準として地球変動を調べることが一般的になりました.なかでもGPSは,プレート運動や地殻変動の検出に広く用いられていますが,GPSを用いて固体地球の変動を精度よく求めるためには,人工衛星から地上に電波が到達するまでの電波遅延の状態を明らかにする必要があります.この電波遅延を詳しく調べることにより,大気圏や地球磁気圏の変動をも明らかにできるようになりました.このことから,GPS気象学という新しい研究分野が生まれました.このようにして測地学と気象学及び地球電磁気学の分野との新たな共同研究が始まりました.
さらに,衛星アルティメーター・データを用いてジオイド面や地球重力場を求める測地学研究は,現実の海面高の平均海水面からのずれを求めようとする海洋物理学的研究と相補的な関係にあります.また,21世紀に入って次々と打ち上げられたCHAMPやGRACEなどの衛星重力ミッションは,地下水変動のグローバルな変化を明らかにできるポテンシャルを有しており,陸水学や雪氷学の研究とも結びついております.
国際測地学協会(IAG)は,国際測地学及び地球物理学連合(IUGG)を構成する7つの協会の筆頭協会でありますが,他の6つの協会(国際地震学・地球内部物理学協会(IASPEI),国際火山学・地球内部化学協会(IAVCEI),国際地球電磁気学・超高層物理学協会(IAGA),国際気象学及・大気科学協会(IAMAS),国際水文科学協会(IAHS),国際海洋物理科学協会(IAPSO))のすべてと研究面でつながっております.
このような測地学の最近の成果と測地学の基礎的知識を詳しく説明した本教科書が,測地学を専門とする研究者や学生ばかりでなく,すべての地球科学の研究に従事する人々に広く活用されることを切望しております.
本教科書の出版は,日本測地学会50周年の記念事業の1つとして企画されたものでありますが,福田洋一,里村幹夫,田部井隆雄各氏をはじめとする多くの学会員の献身的な努力のもとに完成されました.ここにご協力いただいた関係各位に厚く御礼を申し上げます.
2004年9月
日本測地学会会長 竹本修三
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