会議参加報告

〜南アフリカ共和国·Driefontein金鉱山見学記〜

住友金属鉱山(株)菱刈鉱山  狭川 義弘


 今年9月に南アフリカ共和国で開催された10th ISRM Congress(8〜12日)に参加·発表した。この際、学会が企画したTechnical TourとしてDriefontein(金)、Post Congress TourとしてLonmin(プラチナ)、Impala(プラチナ)、Premier(ダイヤモンド)の各鉱山を見学する機会を得たので、ここでは、これらの鉱山のうち、Driefontein金鉱山について紹介する。


1.概要及び地質

 Driefontein金鉱山は、ヨハネスブルグの西約70kmに位置し(図1)、Gold Field Ltd.が100%の権益を有する。Gold Field Ltd.は世界最大級の金生産量を誇り、南アの他、ガーナを中心に年間約110トンの金を生産している(菱刈は年間7.5t)。


図1 ヨハネスブルグとDriefontein金鉱山

図1 ヨハネスブルグとDriefontein金鉱山



 Driefontein金鉱山のある一帯はWitwatersrand Basinと呼ばれ、世界的に有名な金の鉱化帯を有している。鉱床は地表下600mから4,100mに賦存し、3枚の鉱層(Carbon Leader、Ventersdorp Contact Reef、Middelvlei Reef)が存在する(図2)。これら、3枚の鉱層のうち、Middelvlei Reefを除いた2枚が採掘の対象となっている。鉱層は厚さが1m前後で、20度から25で西から東に向かって傾斜している。


図2 Driefontein金鉱山の地質断面図

図2 Driefontein金鉱山の地質断面図



 年間の坑内出鉱量は約380万tで平均品位10g/t前後である。現在、CIP(Carbon-in-Pulp)による選鉱を行っているが、坑外にはCIP導入以前の廃石が山積みされており、この廃石を年間270万tほど処理している。廃石といっても、選鉱による金実収率が低い当時に堆積されたものであるため、品位が2g/tほどある。結果として、あわせて650万tの鉱石を処理することで、年間約40tの金を生産している。

 昨年6月末現在の各鉱区における埋蔵鉱量は図3のとおりで、今回はこれらの鉱区のうち、5E Shaft Zoneを見学した。南アの金とプラチナの鉱山は、一様にSustainable Developmentという言葉を用いるが、これは回収した金属量を新たな探鉱によって補い、埋蔵量を維持することを意味する。巨大な金·プラチナ鉱床を有する南アならではの表現と思われる。


図3 Driefontein金鉱山の確定及び推定鉱量

図3 Driefontein金鉱山の確定及び推定鉱量



2.採鉱

 見学切羽は地表下約3,400mに位置し、全長2kmに及ぶ立坑を2本乗り継いでアクセスした。図2のような緩傾斜の鉱層に対し、採鉱法にはLongwall Miningの一種を適用している。鉱層(Carbon Leaderが採掘対象)の上盤の母岩(溶岩)の一軸圧縮強度は200〜300MPaに及ぶものの、切羽の垂直地圧が約90MPaにも達することから、これまで山はねによる災害が多く発生してきた。

 Driefonteinに代表される南アの大深部鉱山は、この山はねを防止するために、主に2つの方策を講じてきた。一つは採鉱のレイアウト、もう一つはSeismic Dataの管理·分析である。後者については学会でも発表されており、詳細はそちらを参照していただきたい(Klokow, J.W. et al.)。採鉱のレイアウトについては、採掘によって過剰な応力が切羽に集中しないように工夫されている。図4はDriefonteinで採用されているCSDP (Close-Spaced Dip Pillar Mining)と呼ばれる採鉱方法で、鉱画下部の中央から順に左右に展開し、既掘領域が図のようにV字形になるように切羽を展開させる。発破対象となる引立はリブピラー(図ではDip Pillar)に向かって存在し、一つの引立の長さは約15mである。


図4 CSDPレイアウト

図4 CSDPレイアウト



 引立近くの天盤はHydraulic Prop(図5)で支持し、その背後はコンクリートブロックを積み上げたピラーで支える(図6)。さらに、採鉱が進むとコンクリートピラーの領域を、スラリーによって充填する。鉱層の厚さが1m前後ということもあり、機械化が困難で、穿孔には水圧式のレッグドリルを用いる(図5)。坑内の動力は、切羽が深部にあることから、一般的に水頭差を利用する。発破、起砕された鉱石は、人力とスクレイパーを用いて、運搬坑道まで運び、トローリーを経由して立坑で坑外まで巻き上げる。


図5 Hydraulic Propと穿孔の様子

図5 Hydraulic Propと穿孔の様子


図6 コンクリートピラー

図6 コンクリートピラー



3.坑内環境

 引立周辺は狭小で立つこともできない上に、路盤は20度以上で傾斜しているため移動が困難で、作業環境はいいとはいえない。以前は、岩盤の制御方法も限られていたため、数多くの死亡災害が発生していたが、最近ではSeismic Dataの分析方法が飛躍的に改善したこともあって重大災害は比較にならないほど減少したという。

 現場の温度環境は、3,000mを超える地温勾配によって非常に厳しいものがある。運搬·アクセス坑道は通気量、温度とも適切に維持されているが、岩盤の露出面積の多くなる切羽周辺はじっとしても汗がにじみ出る。切羽の温度環境は、湿球温度が28.5度以下になるように管理している(乾球温度は管理していない)。そのため、切羽もとの作業者は図5のように上半身裸で作業し、穿孔水をわざと浴びているようである。

 保護具については、かろうじてヘルメット、手袋、耳栓を着用、携帯しているものの、その他、マスク、メガネ、振動保護具などは持っていない。そのため、長年の労働は塵肺や振動病発病の可能性を増加させ、また、死亡にはならない災害が多く発生していると予想される。それでも、他の仕事よりも割のいい坑内作業に従事する人たちの明るい表情が印象的だった(図7)。


図7 気軽に写真撮影に応じる坑内作業者

図7 気軽に写真撮影に応じる坑内作業者



4.おわりに

 今回、鉱山先進国·南アの大深部金鉱山の一つを見学できたことは非常に貴重な経験だった。岩盤や通気に関する技術·ノウハウには南アならではの卓越したものが感じられた。また、エンジニアの待遇もいいようだ。Driefonteinではエンジニアオフィスを訪れる機会があったが、駐車場の車の多くはドイツの高級車で彼らの待遇の良さが伺えた。

 しかし一方で、細かい部分での保安体制などには不十分なところが認められた。ただ、最近では多くの鉱山がISO14001(環境マネジメントシステム)に取り組み、さらに、一部の鉱山ではOHSAS18001(労働衛生マネジメントシステム)を取り入れている。これらのシステムがさらに導入·有効に機能し、坑内作業環境が改善されることを期待する。



| 岩の力学ニュース No. 69 目次 |

| Home | 概 要 | 入会のご案内 | リンク集 |

| 岩の力学ニュース | 会議・論文募集のご案内 |

Copyright The Japanese Committee for Rock Mechanics