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6月22日
■自由企画1 ヨーロッパにおける環境政治
丸山仁報告「欧州緑の党の発展と分岐―グリーン・ポリティクスの方へ」では、「ニューポリティクス政党」としての緑の政党の位置づけ、選挙での成功の理由、「反政党的政党」から「現実化した」改良政党への転換など基本的論点が提起された。小野一報告「ドイツの選挙政治―赤緑連立政権の環境政治上のパーフォーマンス」では、州レベルでの赤緑の連立政権における成果を踏まえて、連邦レベルでの脱原発政策と環境税を事例として取り上げ、シュレーダー連立政権の環境政策について政策評価を試みた。畑山敏夫報告「フランスの環境政治―政権に参加したフランス緑の党」では、社会党の政権戦略である「多元的左翼」に緑の党が参加したプロセスが分析され、社会党が政策アイデアを緑の党から吸収したことが指摘され、「多元的」左翼政権の限界と新たな左翼政権への模索が論じられた。さらに、会員と報告者との間で、@スウェーデンにおける閣外協力の事例、自治体の環境政策の事例の提示、Aエネルギー政策をめぐる政権、政党、電力会社、反原発運動、労働組合など多様なアクター間の関係、B環境政策や脱原発をめぐるEU政治と各国政治の関係、Cフランスにおける新たな左翼政権の担い手はどのようなものか、D政権に入った緑の党にとって、環境政策など政策の実施のためには、プラグマティズムが必要であること、など活発な議論が展開された。
(坪郷實)
■自由企画2 「開発主義」の現在
東南アジア各国は1950年代の半ば以降70年代までに「開発主義」を採用し、物的・人的資源を大規模に動員し、工業開発を柱とする経済開発の促進に傾注してきた。
まず片山裕会員が「東南アジア型『国家』と開発主義:「開発主義」前夜まで」というタイトルでミグダル(Joel S.
Migdal)のモデルの一般理論の妥当性の主張を試みた。報告では、ミグダルの社会統制力の4つの能力のうち、浸透と徴集能力に関し、長期的統計を用い、東南アジアと東北アジアには際だった相違がみられなかったことが示された。その上で、両者の経済パフォーマンスの違いが国家が社会関係を変える規制する能力と支出する能力にあること、そしてその理由が中間団体の存在にあることが主張された。
次ぎに、東茂樹会員が「東南アジア諸国の国家と開発―タイを中心に―」と題し、1980年代の東南アジア諸国の経済成長過程における政府と制度の役割について、政治経済学的視点からの報告がなされた。報告では、一連の既存研究を分類整理し、それぞれの内容の丁寧な紹介と問題点が提示された。次いで、タイの事例を柱にすえ、マレーシアやインドネシアの事例にも言及しながら経済政策を3つのレベルにわけて経済成長過程における国家と制度の果たした役割が提示された。
両報告に対し、2名のコメンテーター(恒川惠市会員、大西裕会員)からそれぞれラテンアメリカ研究、韓国研究からの比較の視点を中心にコメントならびに質問がなされた上で、フロアーを含む自由討論が行われた。
最後に、1997年のアジア通貨・経済危機を経て、この開発主義への見直しの動きと同時に、マレーシアのように再度開発主義の構築を試みている国もみられる。セッションの中で「現在」を巡る議論にまで十分展開されなかった点が司会者としては心残りであった。
(鳥居高)
■自由企画3 経済停滞への対応と政策改革:90年代日本を中心に
バブル経済崩壊以降、日本は、先進諸国で稀有の長期経済停滞を余儀なくされている。経済停滞に直面し、政府は財政出動などの短期の景気対策とともに、金融や労働市場での規制緩和などの長期の経済構造改革を実施した。本パネルでは、他の先進諸国と同様に日本でも政策課題であった金融・労働市場の構造改革が、日本ではそれと同時に実施された景気対策や公的資金導入、対外援助などの財政出動によって、どのような影響を受けたかを検討した。
具体的には、樋渡氏が「調整型市場経済」(日独)の不況対策(税制、年金改革)に着目し、日独の相違を労働組織と中央銀行の独立性から説明を試みた。岡本氏は96−97年の金融ビッグバンを情報の非対称性/官僚組織の情報優位性から説明し、三浦は社会的セーフティーネットの特徴(失業補償より雇用維持重視)を企業・労組・政府の政策選好から説明した。これらに対し、討論者の加藤氏は3報告の分析対象・説明要因・既存理論・国際―国内連関・問題点をまとめた上でコメントを加え、3論文に共通する課題として国際的要因が看過されている点を指摘した。ノーブル氏は本人―代理人理論の射程と適用の適切性についてコメントを加えた。
討論者およびフロアから指摘された問題点の幾つかを紹介すると、金融のグローバル化の影響への考慮が足りないこと(岡本論文)、ドイツの統合やEUの影響を軽視していること(樋渡論文)、経営者の間の利害対立を考慮していないこと(三浦論文)がある。
また本パネルの共通課題に関しては、樋渡論文は短期的経済政策が長期的経済改革に与える影響を最も強調し、それに対し岡本論文は短期的対応よりも構造的問題に着目するものであった。三浦論文では短期的課題の中でも失業率の上昇よりも財政再建が雇用保険の改革に対して直接的影響を与えていると論じた。
最後に司会の真渕氏が、報告に対しては従属変数をシンプルにする必要があるのではないかということ、しかし比較政治学会において一般的な概念で各国を比較するセッションが今後ももたれることを期待すると述べ、締めくくった。
(三浦まり)
■自由論題
まず岡本会員により「住民投票と地方議会―スイス・チューリヒ市を中心として」の報告がなされた。スイスの地方自治制度の概略と全体的特徴に続いて、チューリヒ市の事例が市議会および市参事会の構成と権限、住民投票および住民発議の制度と実態、市議会議員の意識調査の結果、の三点にわたって説明された。これに対して北山会員から、住民発議の制度についての説明の追加が求められ、さらに課税権と税率決定権の帰属をめぐるダイナミクス、住民投票の対象となる案件の範囲と性格、市議会との関係について論点が提示され、これに報告者が答える形で討論が行われた。総じて、スイスあるいはチューリヒの地方自治の制度と動態を、日本のそれと比較する形で提示して欲しいという要望が目立った。
次に寺村会員から「初期明治国家から見る政軍関係の基礎的問題」と題する報告が行われた。既存の政軍関係理論が「非西欧圏」を分析するのに十分でないという主張に続いて、まず初期明治国家の政治的理念と軍隊の性格という問題が提示され、天皇親政という理念のため、定説とは異なり、時の太政官政府は軍隊を統制し得なかったこと、これはノードリンガーが共産主義体制下の政軍関係について指摘した「浸透モデル」に類似していること、これが昭和期の「統帥権の独立」問題の伏線であることが、主張された。ついでこのような視角から、明治初期の実態が論じられた。これに対して、永井会員から、報告者は誰が兵権をもっていたかを明らかにしていない、統帥権独立の本質を理解していない、などの厳しい批判が寄せられ、報告者がこれに反論する形で討論が行われた。
(馬場康雄)
6月23日
■分科会1 疑似権威主義体制
本企画は、民主主義体制への移行は始まったが、逆戻りしたり、未だ定着し得ていない事例に焦点を当てたものである。具体的な報告は、林忠行会員から、1993年に主権独立国家となったスロヴァキア、非会員の岡奈津子氏から、大統領独裁が続く中央アジアのカザフスタン、出岡直也会員から、アルゼンチンを中心としたラテンアメリカ地域について、それぞれ行われた。いずれの報告も、各事例に迫りながら、他方で、単なる対比ではなく比較への意欲が十分に伺われるものであった。報告の後、討論者の高橋進会員からは、定着に成功した事例との比較から、定着の要因として、民主化以前の政治状況、近隣諸国との関係、そしてそれ以前の体制に共通であった価値の否定が指摘された。また、同じく討論者の戸田真紀子会員からは、アフリカ諸国の権威主義体制の特徴として、反体制派弾圧の軍事力とパトロン関係維持を目的とした経済力との支配、当該体制への国外からの直接・間接的な支援、そして新家産国家ともいえる国家の私物化が提示され、各報告事例との比較が行われた。40名を超えるという参加者数は、本企画に対する会員各位の関心の高さを傍証するものではあったが、研究大会という場の制約上、各報告、討論、更にはフロアとの質疑応答に十分な時間を割くことができなかったことは残念であった。ただし、民主主義的な形式を備えながら、実質的な政治スタイルが権威主義体制に近いという、非常に捉えにくい事象に関して、今後の理解を深めるに有為な論点、知見が得られた分科会であった。
(月村太郎)
■分科会2 グローバル化するアジア─国民社会の再編─
冷戦後のグローバル化の時代に、アジアはどう変わったのか。また、社会の変質は政治をどう変えたのか。三人の報告者が、このテーマに挑戦した。谷垣真理子は、香港返還が人・モノ・金の「北上」を進め、香港の経済的退却と中国の成長を招いたという。白石さやは、インドネシア統合の理念として、スカルノとスハルトの体制を支えてきた「家族主義」が、民主化後は「汚職の温床」として糾弾される構造を指摘した。革命後のイランを扱う桜井啓子は、イスラム主義から能力開発への政策的変化に、欧米との対抗と国内格差の是正という二重の課題を負った、この国の国民教育のダイナミズムを指摘した。討論者の清水展は、グローバル・ナショナル・ローカルという三つの意識が混在する社会で、グローバル化の強まりと土着主義の反発という構図が見られると指摘した。国分良成は、グローバル化を体現した香港が統合後は中国によって国民国家化されるという逆説を提起した。議論では、結節点としての1979年や97年、メディアの影響力など、今後の比較研究の課題も指摘された。
(竹中千春)
■分科会3 政党政治の実験─カナダとオセアニア─
地理的な周辺性や政治文化の相違等様々な要因により例外として扱われてきたカナダ、オーストラリア、ニュージーランドを比較の視座から分析することを目的とした本パネルでは、異なる観点からそれぞれの政党政治を分析する論文が発表された。新川敏光論文では、まず進歩保守党と自由党の二大政党に加え小政党の新民主党による、汎カナダ主義的合意が1993年総選挙によって崩れたことを指摘する。この選挙における地域主義政党の台頭が、その後、自由党安定政権下での地域主義政党による汎カナダ主義政党の支持基盤の切り崩しを生み、その結果エリート協調に基づく財政連邦主義の衰退を招いたことを主張した。杉田弘也論文は、通説的オーストラリア理解を否定し、二大政党の対立と多数決主義により決定が行なわれる下院と、それに匹敵する権限を持ち多党化によるコンセンサス形成が行なわれる上院の対照に焦点をあてる。議会制度の精緻な議論に加え、1999年の税制改革法案の審議過程からこの特異なダイナミズムを活写している。神谷直樹論文は、20世紀初頭には「社会改革の実験室」と呼ばれ、最も進んだ福祉国家と言われたニュージーランドの政党政治の歴史をたどりつつ、1980年代において労働党政権の下で、規制緩和と福祉国家再編が進められた政党政治のパラドックスを中心に議論を進める。その上で、1990年代の国民党政権が目ざした「企業国家」が有権者の支持を獲得できなかった後、1999年に政権復帰した労働党政権の政策選択肢について興味深い示唆を行なった。討論者である阪野智一、宮本太郎両会員は、地域主義、民主主義制度、福祉国家といった比較政治学の枠組を踏まえた上で、それぞれの事例に鋭く切り込むコメントを行なった。フロアからは、細かい論点まで質問が提出され時間ぎりぎりまで活発な論議が行なわれた。
(加藤淳子)
■分科会4 だれが「国民」nationだったのか─19世紀末−20世紀初のヨーロッパにおける「国民」観念と政策─
この分科会のテーマは、古典的な国民国家のモデルとして取り上げられる西欧「先進国」の「国民」について、19世紀における概念と、政策を比較検討することであった。渡辺報告は、フランス革命が作り出した国民概念から排除された外国人に焦点を当てることによって、国民概念をより明確なものとし、それによって革命時の「単一不可分の共和国」に始まり、今日にまで至る移民排斥の深層に潜む問題を指摘した。川本報告は、英国におけるナショナル・アイデンティティが重層構造になっている点を指摘し、別の路線をたどったアイルランドを除いて、「イギリス帝国」を媒介として「イギリス人」としての意識がより際立っていく過程を検討した。植村報告は、ドイツの抱える「国民」「民族」という用語の問題から始まり、近代化との軋轢と、それに対して統一国家を重視したビスマルク的な解決という歴史的経緯を検討した後、具体的政策に言及しながら、ドイツ帝国によってドイツ・ネイションが形成されたことを指摘した。討論者の田口会員から、それぞれ国民統合の過程はどのように進行したのかという問いと、各国における「国民」の今日的な意味という問題提起がなされ、フロアからのコメントも受けて、報告者との議論が交わされた。現在のナショナリズムや他地域の問題関心からは、えてして雛型として捉えられがちな「先進国」のケースも、一概には捉えられないものであり、また文化的概念対政治的概念という二分法でも片付けられないことが改めて確認された。
(唐渡晃弘)
■共通論題 EU統合と国民国家デモクラシーの構造変容
共通論題は企画の期待通り、地域研究的な「各論」にとどまらず、統合論・政治学理論への鋭利な踏み込みがなされたといってよいと思う。一方で、西欧以外を専攻する研究者からのフロア発言のように、ヨーロッパとその研究の「EU化」がグローバルな比較の中で「分かりにくい」ものになっていることが印象づけられた。それも忘れがたい成果である。
報告では、まず、小川有美会員の「統治と民主?EUと北欧」は、エリートと民意のギャップ、ヨーロッパ化する係争を通じて、「正統性の分散」が起こっていると論じた。若松邦弘会員の報告「『サッチャー後』のイギリスにおけるサブナショナルデモクラシーの活性化」は、経営的論理のネットワーク・ガバナンスが自治的な多層的ガバナンスへ進展する現象を論じた。村上信一郎会員の報告「欧州経済通貨統合とイタリア政治の構造変容」は、EMU(経済通貨同盟)に最適通貨圏論が妥当しないことや、「外圧」の下でのテクノクラティックな政治がイタリアの民主主義にもたらすリスクを論じた。
討論では、平島健司会員が正統性の用法について、地域再編への政党政治の影響について、EMUが国内改革を推進した積極的側面について尋ねた。津田由美子会員は、ロッカン的なEUの歴史的位置づけ、ガバナンスを分類することの意義、テクノクラシーから民主的正統性への移行の可能性等について質問した。松下洋会員は、特にラテンアメリカ、メルコスールとの比較から、オプト・アウトや加盟条件としての民主性の意味について議論した。全体討論では、利益対アイデンティティ、統合と分裂といった欧州政治の多義性・明暗が指摘され、極右政党の台頭についても討論が展開した。締めくくりに司会の高橋進会員から、ヨーロッパの平和と領域なき民主主義について付言がなされた。
(小川有美)
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