インターネットを利用した生命科学情報の 広域データベース化とその意義
−日本産アリ類カラー画像データベースの紹介−

月井雄二 1),木原 章 1),鵜川義弘 2)

1)法政大学第一教養部生物学研究室,2)農業生物資源研究所遺伝資源第二部DNA 管理情報科
〔別刷り請求先:〒102 東京都千代田区富士見2−17−1 法政大学第一教養部生物学研究室〕
(原稿受理日 1995年2月1日)


【要約】 生命科学における知識は関連する情報の集積がなければ意味をなさない。しかし,今日では生命科学関連の研究活動がさかんになるにつれ情報の洪水が起きつつある。膨大な量の情報を効率的・効果的に利用するためには研究情報のデータベース化が必須である。ただし,多種多様な生命科学情報のデータベース化を専門機関のみにたよることはできない。そのため,近年は研究者自らがサーバを管理し,それらを Internet 上で相互にリンクさせた distributed public domain databases(DPDD)を作る動きがさかんである。
 生物分類学では,従来原記載のもととなった模式標本が世界各地に分散しているため,それらを利用することは非常に困難な状況にあった。模式標本およびそのほかの分類情報を電子化し DPDD として Internet 上で利用できるようにすれば有用であろう。その一例として,われわれと日本蟻類研究会は協同で日本産アリ類258種を対象とした生物分類カラー画像データベースを構築し,それを Internet 上で公開した。また,同じものを CD-ROM でも利用できるようにした。


【キーワード】 Internet,サーバ分散型広域データベース,日本産アリ類カラー画像データベース分類情報World Wide Web

1.はじめに

 Internet は近年の急速な普及に伴いさまざまな形で科学活動に利用されるようになった。電子メール,ニュースなどによる1対1ないし不特定多数を対象とする情報交換のほか,メーリングリスト,ニュースレター,電子ジャーナルなど特定の研究テーマ・特定のグループ間の情報交換にも利用されている。また,文献データの共有をめざした電子図書館の設置やプレプリント(論文原稿)の交換などもさかんになりつつある。
 その中で生命科学分野においては研究情報の共有化をめざした広域データべース,Distributed Public Domain Database(DPDD)構築の動きが目立っている。ここでは,DPDD とは何かを紹介し,その科学活動における意義について考える。また後半では,DPDD の一例としてわれわれと日本蟻類研究会が協同で構築した日本産アリ類を対象とする生物分類カラー画像データベースを紹介する。