図2 設計事務所で使用しているCADソフト(複数回答)
「日経アーキテクチュア」no.522:広告企画(設計プレゼンツール95)から転載
JW_CADおよび,DRA-CAD,AutoCADはDOS系のハードで動作
,MiniCADはMacintosh用のソフトである。2位以下のCAD
はすべて商品である。
2位のDRA-CADは国産で,関連ソフトとして法令チェックとか構造計算
,建物の収支計算といったソフトとデータ互換性がある。3位の
AutoCADは1994年には累計100万本という世界で最も売れて
いるCADであり,開発元の提唱したDXFという中間ファイル形式が
,事実上CADのデータ互換用の標準ファイル形式となっている。もっとも
,「所有者は多いが使用者は少ない」とも言われている。
4位のMiniCADはMacintosh用であるためDOS系のCAD
と違い,オブジェクト志向であって,面情報を持っている。このことはレンダリング
等のグラフィック処理にはメリットであるが,DOSのCADユーザが乗り換えたときには戸惑いを
感じさせる。
JW_CAD は,商用BBSの中で開発者・ユーザー同士によるサポートが行なわれ
,また建築系の雑誌が,このソフトを付録に付けた解説書を販売した(図3)。しかし
,このように普及したのはむしろ,商品ソフトとは一線を画した
,製図板からすんなり移行できる「基本機能の使いやすさ」が理由であっ
た。筆者の職場でも,AutoCAD 導入当初は,いくら講習会を開いても使う人間は増えなかった。とこ
ろが,JW_CAD は講習会を開かなくても使う人間が増え,あげくにそれを見ていた周囲から講習の開催要求が出されたほどである。
図3 JW_CADによる作図例(愛知県 林 徹生氏)
「建設知識別冊JW_CAD徹底解説」no.437から転載
さて,このようなCADが「無料」で出回ったために,
それまで,何十万円という価格のCADを売っていたベンダーや販売代理店の
,ユーザサイドから見れば本末転倒といいたくなる行動が散見された。
ベンダーの業界団体では1993年10月に「フリーソフトウェア対策小委員会」を設立し
,「パソコン通信などを経由して無料で配布されるフリー・ソフトウェ
アが,ソフトウェア業界に与える影響を評価し,商業ベースで販売されるソフトと共存しうるかどうか
を模索」した。また,販売代理店のセールスマンたちが「
JW_CADは某商品CADの盗作で裁判になっている」「もはや開発中止になった」等とデマを飛ば
している,という報告がJW_CADをサポートするBBSに相次いだ。
もっとも,最近は既存CADとの住み分けが進んで,既存
CADは三次元,レンダリングといったグラフィック的機能を付加し
,そういった機能を要求するユーザ層に食い込んでいる。対策小委員会でも
「商品売れ行きへの影響は不明」という見解に落ち着いている(「日経アーキテクチュア」No. 517)。
図4 使用している機器および導入ハードウェアのシェア(複数回答)
「日経アーキテクチュア」no.522:広告企画(設計プレゼンツール95)から転載(一部改変)
図5 今後導入したいハードウェア(複数回答)
「日経アーキテクチュア」no.522:広告企画(設計プレゼンツール95)から転載
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すでにCADを導入している 76.1%
導入する予定はある 21.7%
導入する予定はない 2.2%
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である。無回答はCAD導入に関心がない,と見て差し支えないだろう。とすると
,実際にCADを導入している事務所は,全体の約40%。筆者の周囲を見
ても,そんなものである。また,その中でCADで描いている図面が80%以上というのは3割にすぎない。
このように,ソフトはJW_CAD,ハードはPC98系から
Macintoshへの移行傾向,そして普及率は全体の4割,しかもその中でほとんどの設計作業を
CAD化しているのは3割,という状況は,何を意味しているのだろうか。
設計のプロセスは,原点から形を練っていく過程で
,エスキスと呼ぶデッサンを経る。その後,所員が手分けして設計図を製図していく作業へ移る。こ
の最後の製図作業をCAD化しても,エスキス作業は従来とおり紙に鉛筆で行なっている
,製図板をパソコンに変えただけの使用者が多い,ということ
だ。
そういった利用者にとって複雑な機能は必要ない。いかに
,これまでの製図板に近い感覚で線が引けるか,が要望になる。また
,改修工事のように,そもそものエスキス過程がほとんどない設計作業も
ある。そういった業務にも,JW_CADのような基本的機能のみで使いやすい
CADの方が効率的である。
JW_CADが世に発表された時のバージョンはver.
0.70であった。その後の進化で,最新のバージョンはver.
2.00となり,日影図が描け,ワイヤーフレームの三次元描画までこなす。しかし
,JW_CADユーザの相当数はそういった機能を使っていないようだ。
一方,エスキスから高機能CADを使う建築家も現れている。この場合
,エスキスが三次元的に検討できる,というのが最大のメリットである。これま
で思いついても図面化できなかったような複雑な三次元形態も三次元
CADであれば図化できる。
こういった使い方をするには,これまでの製図板的発想から
,CAD的発想への転換が必要である。また現在のパソコンCADの三次元機能では,このような使い方に十分応えていないが
,Macintosh用にオレゴン州のArtifice社が開発したDesignWorkshop
のように,三次元CADというより,もはやデザイン・アシスタント的存在も登場し
ている。
楽観的予想であるが,そのようなハイエンドCADによって ,これまでは建築家のスケッチブックの中にしか存在しなかった夢物語のような建物が 実現するかもしれない。そういった建物がデザイナーの独りよがりではなく ,その建物を利用する人々やその周りに住む人々にも歓迎される夢物語に なってほしいものだ。