2008.7.15
主査:木全洋一郎(JICA)
本部会では、2008年4月から6月半ばまで、以下のような活動を実施してきました。
1.研究部会
第3回研究部会
日 時:4月26日(土)15:00〜17:30
場 所:JICA国際協力総合研修所大会議室
出席者:46名
報告テーマ・発表者:
(1) 「進化する地域づくり・自立推進と国際協力の統合−長崎県小値賀町から学ぶ」 (名古屋大学国際開発研究科 西川 芳昭)
(2) 「小値賀から見た世界−交流・協力」 (小値賀町総務課自立推進班 古川 学)
報告要旨:
(1) 長崎県小値賀町のPRA研修は、「一村一品」運動の成功だけを伝える研修内容に疑問を持ったJICA担当者の疑問から、地域振興の試行錯誤の経験を伝える研修として始まった。具体的には、地域資源の評価をし、その結果を住民たちに発表するというものである。発表に対する住民たちの評価として、都市化に対する疑問と自然資源に対する誇りの強化、子供たちの定住に対する希望の弱さを再認識と定住できる環境にすることへの希望、町当局と住民との情報共有の場としての認識といった点が出された。こうした研修を通して、地域の固有資源を活かすことの普遍性を研修員と住民が相互学習できること、それを通じて国際協力・交流が地域再生に戦略的に活用しうることが見えてきた。また研修を通じて、参加型開発におけるリーダーシップの重要性を認識し、行政からのトップダウンでは住民の参加意識が伴わないことに気づき、今後は自分たちの発意による「草の根技術協力」の申請につながっていった。
(2) JICAからの研修員を受け入れた際に、それが住民にどう影響していたか、研修を受けた人が自国でどう活かしているのかを確認したいと思い、地域提案型での研修実施に移行していった。研修を実施することで、研修員自身を通じた地域振興への貢献はもちろんのこと、研修員が住民とは別の角度で小値賀を評価することによる町の振興への寄与、行政と住民、研修員が同じテーマで議論する機会による協働参画・住民参加型社会の形成といった意味を持つことが期待されている。実際に研修を実施してみて、住民たちから海外に対する関心、小値賀自身の再発見につながったとのコメントを得ている。住民と協働していく際の問題点としては、住民たちがどこまでこの研修を理解してくれているのかをどう把握するかがある。そのために、住民向けのワークショップも開催し、住民の目線に立って事業を展開しようとした。住民が自ら乗ってくるような船を作らなければ前には進まないということにも気づいた。こうした地域資源を活かした研修は、自治体合併をしていたらできていなかっただろう。JICAも海外の研修員に研修を提供するのであれば、自らその地に足を何度も運んで、研修員以上にその地を知る努力が必要ではないか。
第4回研究部会
日 時:2008年5月24日(土)14:00−17:00
場 所:JICA東京 セミナールーム15
共 催:山口大学
後 援:阿武地域グリーンツーリズム推進協議会
出席者:44名
報告テーマ・発表者:
「国際協力と地域振興をどうつなぐか」:古賀大三(山口大学学長特別補佐 国際・社会連携担当)
「山口県のムラから何をみるのか」:辰己佳寿子(山口大学 エクステンションセンター 准教授)
「地域が学べる国際協力」:白松博之(農家民宿「樵屋」大将)
「かあちゃんの触れ合い哲学」:白松紀志子(農家民宿「樵屋」女将)
コメンテイター:
高橋仁志(阿武町役場経済課商工水産係 係長)
山本郁夫(アイシーネット株式会社代表取締役、元阿武町民 開発実務実習世話人)
藤城一雄(国際協力機構筑波国際センター研修業務課主任、阿武町JICA本邦研修仕掛け人)
報告要旨:
JICA研修やまちづくりを通して、「依頼側(A)と受入側(B)」の上下関係が見えてくる。この構造は、途上国の研修員が日本の農村で行う研修に限定された問題ではなく、日本国内の地域開発を行う際、日本人が途上国で国際協力を行う際、研究者がフィールドで調査を行う際なでも生じる可能性をもつ共通課題と捉えられる。「都市(A)と農村(B)」の関係において、(B)は常に「消費される」「従属する」という発想を転換して「むらまち交流」行っているのが阿武町である。それぞれの地域が双方向の関係をもち、共に影響を受けあい、変化していけないかという点に可能性をJICAの研修の中に見出したい。
いろいろな研修を引き受ける中で、とまどいや意見の違いも感じており、もっと受入側と依頼側の両方の話し合いが必要ではないか。研修の中では、十分な説明がなかったり、責任の所在がわからなかったり、何のためにやるのかという趣旨が明確でない研修がある。何年も続けるのであるならば、受入側のメリットがなければ、受けていけないのではないか。依頼側と受入側の意識や目線の違いを、きちんと埋めておかなければならない。双方がしっかりしたプログラム作りをするためには、メールと電話では通じない部分があり、一度は顔を合わせて議論しなければならないのではないか。
共に必要とされる関係こそ、共に成長できる。私達もあなたたちから教えてくださいという姿勢が大切。表面的に施設をみるよりも、農村が持つ知恵を見てほしい。間を取り持っている媒体者も、そして、研修員も、戦後の日本の復興の中でどのような農村の知恵がいかされてきたのかをみられるシステムになっていけばよい。そうすることで私達もその知恵の再認識することができる。
2.その他の活動
滋賀県甲良町視察ツアー(4月18-19日)
第2回研究部会で取り上げた滋賀県甲良町の「住民主体のまちづくり」の取り組みをバングラデシュの地域開発研修と併せて視察しました。
『Monthly JICA』の特集企画協力
JICAの月刊雑誌「Monthly JICA」の2月号特集および5-9月号の連載企画として、日本の地域振興を活かした国際協力事例について、本部会とタイアップして企画・取材がされました。
春季大会での企画セッション(6月7日)
本学会の春季大会で、企画セッション「日本の地域振興と国際協力」として発表を行いました。このセッションでは、主に立ち位置の違う「媒体者」が途上国のニーズと日本の地域を結びつけるためにどういった働きかけをしたかという点に焦点をおいて発表・議論をしました。詳細は、春季大会報告を参照下さい。
7月以降は、これまでの発表や視察から得られた教訓をまとめる作業をしていきたいと思います。次回研究部会の日程が決まり次第、学会MLなどでお知らせします。
本部会に関するお問い合わせ・お申し込みは、info_chiiki@yahoo.co.jpへお願いします。