委員長挨拶

松尾由賀利

(理化学研究所)


 
 
 
 

 男女が互いにその人権を尊重し、性別に関りなくその個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、少子高齢化の進展や 社会経済情勢の急激な変化を背景に、緊要の課題として取り組まれるようになりました。特に理科系分野においては、若者の理科離れというもう一つの深刻な状 況が加わり、他分野にも増してその必要性が強く認識されるに至っています。
 男女雇用機会均等法の施行から20余年、男女共同参画社会基本法の制定から10年近くが経過し、この間に社会で活躍する女性の割合は確かに増加してきま した。道なき道を切り拓いてきた先人の時代に比べると、あらゆる分野において生き生きと活躍する女性の姿を目にする機会が増えています。
 にも関らず、理系、特に物理学の分野において、日本の女性研究者が世界的に見ても極めて少ない状況は変わっていません。人材の育成は時間のかかることで すから、もちろん一朝一夕に改善する問題ではありません。しかし、研究者や理系の職種を目指す人材がその継続が困難であるが故に道半ばで離れることが続け ば、事態はいつまでも変わらないでしょう。2002年に設立された日本物理学会男女共同参画推進委員会は、歴代委員長のもとこれらの問題に取り組んできま した。他学会と連携した大規模アンケートによる実態調査とそれに基づいた提言のまとめは政府を動かし、女性研究者支援の施策が動き始めました。さらに女子 中高生を対象とした科学塾を通した啓発活動など、多くの成果をあげてきたと言ってよいでしょう。
 最終的には、このような法律や委員会が不要になる社会が形成されることが望ましいのだと私自身は思います。残念ながらゴールまでの道のりはそれほど近い ものでなく、息の長い取組みが必要となりましょう。特に、男女双方における社会的な意識の改革は時間のかかる問題です。しかし、研究や仕事の継続を困難に する、女性に起こる問題は男性にも起こる問題であり、逆もまた然りです。今の社会の姿とかくあるべき姿を見合わせたときに、かくあるべき姿に向かってその 間を埋める地道な努力が欠かせません。
   学会は専門の学術を議論し、高めあうために集うコミュニティーであると同時に、その成果を社会に広める任を負う社会的存在でもあります。学会の委員会と してこの問題に取り組む意義と責任を自覚しながら、男女に関りなく物理学に携わる人材が生き生きと活躍する社会、ひいては誰もが自分の将来にビジョンを持 てる社会の実現に向けて、学会として何ができるか議論を深め、活動に繋げていきたいと思います。どうかよろしくご支援のほど、お願い申し上げます。

2009年4月 30日
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