ライム病(Lyme borreliosis, Lyme disease)


病原体:細菌

1.分類

スピロヘータ目、ボレリア (Borrelia)属。ラセン状の形態。微好気性。運動能を有す。
グラム陰性であり,アニリン系色素で染色される。
細胞質膜の外側に鞭毛 (ペリプラズマ鞭毛,軸糸などと呼ばれる)を持ち,その外側がエンベロープ(外皮)で覆われている (スピロヘータ目の全体的形態)。つまり,鞭毛は外界に出ていないが,これで運動する。ペプチドグリカン層の重合度は低く,菌体は柔軟である。
ライム病を起こすボレリアは多種検出されている。最初に検出されたのはBorrelia burgdorferi であり,ライム病を起こすボレリアを総称してBorrelia burgdorferi sensu lato とする。この中にはB. burgdorferi sensu stricto ("厳密な意味では"の意),の他の多種がある。どのボレリアもライム病を起こすが,菌種により,病原性に差がある (症状の強弱)。日本ではB. garanii を主としてB. afzelii , B. japonica が検出されている。ただし,B. japonica は病原性がないか,あっても非常に弱いと考えられる。

2.特性・病原性

細菌の中では極めてユニークであり,線状染色体を有している(他細菌は環状)。特定の株 (B31 標準株) ではゲノム全塩基配列が決定されている。約950kbの線状染色体と数本以上の線状あるいは環状のプラスミドを有している。プラスミド上には重要な細胞表層蛋白 (Osp; outer surface protein, A-G) やヌクレオチド合成酵素など細菌の分裂・増殖に必須な遺伝子が存在しており,これらプラスミドはミニクロモソームと考えられている。
病原性 (感染・発症) にOsp が大きく関与していると考えられている。マダニ(下述)中の菌はOsp Aを発現しているが,哺乳動物に侵入するとOsp Aは消失し,Osp Cが発現されてくる。このOsp C発現が哺乳動物への感染に必須と考えられている。

3.感染経路

自然界の保有体 (reservor)は齧歯類やトリ類である。
マダニ (Ixodes 属)には幼虫,若虫,成虫の時期があり,各時期に一度吸血する。幼虫時期に菌保有の齧歯類やトリ類を吸血したものが菌を保有する(菌はマダニ中腸で増殖)。
菌保有のマダニの若虫,成虫がヒトを咬着・吸血し,菌がヒト血中に入り,感染する。つまり,マダニが媒介動物 (vector;ベクター) である。マダニの成虫はシカなどの中型哺乳動物を咬着・吸血する。シカはマダニの拡散に重要な役割を果たしていると考えられている。人類社会の拡大に伴い,森林が破壊され,シカは減少してきたが,第2次大戦後の森林回復によりシカは増加している。この増加・移動がライム病の拡散・増加につながっているとも推測されている。
多種のマダニが菌を保有しているが (つまりベクター),すべてではない。(主なベクターのマダニは疫学の項参照)