MRSAの現状と対策


ーーーーーー著者ーーーーーー

平松啓一
順天堂大学 医学部 細菌学教室

I. MRSAとは

 MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)とは、メチシリンで代表されるβ-ラクタム薬(ペニシリン・セフェム系薬の総称)のほとんどに耐性を示す黄色ブドウ球菌です。その耐性メカニズムは、PBP2'(penicillin-binding protein 2')と呼ばれる細胞壁合成酵素が産生されることで説明されます。細胞壁とは、細菌細胞全体をすっぽり被って細胞を守っている堅固な構造物で、菌が生きていくためにはこの細胞壁を常に作り続けなければならないのです。したがってその作業をする酵素はきわめて重要なタンパク質ですが、そのうちのひとつがPBPで、ペニシリン・セフェムなどのβ-ラクタム薬は、この酵素に結合して、細胞壁の合成を阻害して、細菌を死に至らしめるのです。ところが、MRSAは、他の菌種から、β-ラクタム薬が結合しにくいPBP(PBP2')を作る遺伝子(mecAという名前がついています)を導入した毛色の変わった黄色ブドウ球菌なのです1)。

 MRSAは1960年に英国で最初に臨床分離され、その後全世界に広がり、現在では、MRSAの検出されない国はないという状況です。日本でも1980年初期から全国に蔓延し、ほとんどすべての病院の院内感染菌として定着した感があります。MRSAは単一なものではなく、例えば、1960年代に英国、ヨーロッパに蔓延したMRSA株と、1980年代に旧大英帝国の国々に蔓延した株は、お互いに全く異なった系統の菌株です。ところが、これらの株は、日本では、ほとんど検出されず、日本のMRSAは独特の遺伝型をもっており、上記の外国のMRSAとは性質が異なっています2)。

 さらに、日本に蔓延しているMRSAに限定しても、1980年代のMRSAと1990年代のMRSAとでは大きく遺伝型が異なっています3)。つまり、MRSAとは集合的な概念であり、その中には、たくさんのクローン(お互いに独立に誕生したMRSAの菌株)が存在し、各国での抗菌薬の使用法の違い、また、国内での抗菌薬使用の経時的な変化によっても、新しいクローンが入れ替わり立ち替わり現れるのです。

II. MRSAクローンの誕生

 MRSAは、我々ヒトの常在菌である黄色ブドウ球菌が、メチシリン耐性遺伝子mecAを獲得すると誕生します。黄色ブドウ球菌の環状染色体の特定の部位(attBsccと呼びます)に細胞の外から入ってきた動くDNAが入り込みます。この動くDNAをカセット染色体(staphylococcal cassette chromosome mec; SCCmec)と呼び、その上にメチシリン耐性をおこす遺伝子mecAが乗っているのです。4)このカセットには、いくつかの構造の異なる種類が見つかっており、世界各国の病院の中のMRSA株を調べると、3種類のカセット染色体が見つかります(type-I, -II, -III SCCmec)。3) このことは、MRSAには、その誕生にさかのぼって、少なくとも3つの異なるクローンがあることを意味しています。つまり、MRSAは、1960年に英国のJevonsが世界で最初に発見したクローンも含んで、少なくとも歴史上3回は、独立に誕生したことになります。さらに、たくさんある黄色ブドウ球菌の、どの菌株の染色体に、SCCmecが入ったかによっても、クローンが異なります。Multiple Locus Sequencing Typing (MLST)という、現在、最も信頼できる方法で調べると、世界20カ国の病院に蔓延しているMRSAについては、5つの全く異なる黄色ブドウ球菌がMRSAに転換していたことがわかってきました。5)

III. 進化するMRSA

 MRSAは、我々の抗生物質の使用状況に合わせて、どんどん進化を続けています。ここ数年で明らかになりつつある大きな進展について以下に述べます。

1. β-ラクタム高度耐性化

 病院の中では、実に多くのβ-ラクタム系薬が使用されます。 第1、第2、第3、第4世代のセフェム系薬 (セフェム系薬は、1960年代から、だいたい10年おきに、抗菌スペクトラムの拡大した、あるいは、特定の菌種に強い抗菌力が付与された新薬が発売されてきました)、ペニシリン、カルバペネム (最大の抗菌スペクトラムを持つペニシリン系薬)など実に多様です。MRSAのペニシリン・セフェムに対する耐性度は、同じクローンから派生したものでも、菌株ごとに異なっています。現在、β-ラクタム薬に対する耐性パターンからは、4種のMRSAが区別されます。第1は、メチシリンには感受性であるのにセフェムには耐性のpre-MRSA,第2は、イミペネムなどに高い耐性を持つが、メチシリンの低い濃度に感受性を示すEagle-type MRSA, 第3は、メチシリンに耐性であるが、イミペネム、フロモキセフ、セフメタゾールなどに感受性のヘテロ耐性MRSA、第4は、すべてのペニシリン・セフェム系薬に耐性を示すホモ耐性MRSAです。6) Pre-MRSAとEagle-type MRSAは、臨床分離される頻度がきわめて少ないので、以下に、臨床的に重要なヘテロ耐性MRSAとホモ耐性MRSAについて説明します。

 ヘテロとは、種々雑多なという意味の英語のhetergeneousの略で、この菌株の特徴は、その細胞集団が、ペニシリン・セフェムに対して高度耐性から軽度耐性、あるいは感受性のものまで種々の耐性度を持った細胞から成り立っていることです。この細胞集団の大多数の菌の持つ耐性度を調べると、メチシリンはMIC(最小増殖阻止濃度)で64-128 mg/mlとなり、いわゆる中等度耐性のMRSA株ということになります。

我が国では、1980年代に蔓延したMRSA株に相当し、現在では、日本国内の大規模な病院の院内感染菌としては、むしろ少なくなっていますが、外国では未だに多く検出されます。このヘテロ耐性MRSAに、イミペネム、セフメタゾール、フロモキセフ、など、ブドウ球菌に強い抗菌力をもった薬剤を用いると、その細胞集団の99.99%を増殖抑制あるいは殺菌することができます。したがって、白血球の機能に代表される感染抵抗力がある程度保持されている患者では、残りの0.01%の菌も体内で殺菌され、感染を克服することができます。しかし、ここで問題になるのは、この0.01%の細胞集団は、イミペネム、セフメタゾール、フロモキセフをはじめペニシリン・セフェムすべてに耐性を示すいわゆる高度耐性MRSAだということです。この細胞集団が増殖し、その高度耐性が安定したものがホモ耐性MRSAとなるのです。ホモとは均一という意味の英語のhomogeneousの略で、ホモ耐性株とは、その細胞集団がすべて高度耐性の細胞で成り立っているということを意味しています。ホモ耐性MRSAは、ヘテロ耐性MRSAがイミペネムなどの強力な抗菌薬で選択された結果、より耐性度を増強して生き残ったMRSAであるといえます。我が国に1990年代から蔓延してきた高度耐性MRSAが、このホモ耐性MRSAで、歴史を振り返って見ると、1980年代に急増したMRSA感染症に対して、1980年代半ばから、黄色ブドウ球菌に抗菌力の強いセフメタゾール、セフォチアム、フロモキセフ、イミペネムなどを用いて対処した結果1990年代に高度耐性MRSAが急増した現象は、さきほど述べたヘテロ耐性からホモ耐性への変換として説明することができます。3)このMRSAは、外国のMRSAや、1980年代に蔓延したMRSAと異なり、TSST?1(toxic shock syndromeをおこす毒素)という毒素を産生する特徴をもっており、希に、血中に入ると毒素産生が急激に誘導され、患者をショック死させた例もあり、油断のならないMRSAです7)。

2. 多剤耐性化、バンコマイシン耐性

 病院の中では、我々が最も多く用いるβ-ラクタム薬(ペニシリン・セフェム系薬の総称)に加えて、アミノ配糖体、マクロライド、ニューキノロン、ミノサイクリンなど、いろいろな種類の抗生物質を使用します。従って、そのような病院で生き抜いてきたMRSAは、これらの抗生物質にすべて耐性化しています。(黄色ブドウ球菌は、我々の常在菌であり、MRSAも病院に入院中の患者に寄生して生きています。従って、その患者がいろいろな抗生物質を注射されても寄生し続けるためには、黄色ブドウ球菌は、β-ラクタム高度耐性、多剤耐性のMRSAに変貌する必要があるのです。)つまり、病院の中に蔓延しているMRSAの特徴は、β-ラクタム高度耐性だけでなく、多剤耐性ということになります。

 その多剤耐性化を極限まで達成したMRSAがバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin-resistant S. aureus; VRSA)です。日本では、現在、バンコマイシンは、テイコプラニン (バンコマイシンと同じ作用メカニズムを持つ、類似抗生物質)、アルベカシンとともにMRSAの治療薬として使用されています。以前から、アルベカシンに耐性のMRSAは、ありましたが、数年前までは、バンコマイシンに耐性のMRSAは報告されていませんでした。しかし、1996年に、バンコマイシン軽度耐性のLow-level VRSA (L-VRSA; バンコマイシン最小阻止濃度MICが8 mg/Lの菌株: 米国では、vancomycin-intermediate S. aureus; VISAと呼ばれています)が報告されました。8,9) このような株は、現在までに、世界7カ国から数十株が報告されています。正確なMICの測定(米国NCCLSの液体希釈法によるMIC測定基準を用いる必要があります)が要求されるため、多くの臨床分離L-VRSAが見逃されている可能性があります。L-VRSAの耐性メカニズムは、分厚い細胞壁(cell-wall peptidoglycan layers)を合成することです。そうすることによって、バンコマイシン分子が細胞壁を容易に通過できなくします。10) このようなメカニズムは、菌にとって、大きな負担となります(耐性獲得によるfitness costが大きいという表現をします)。したがって、バンコマイシンを大量に使用しなければ、病院内で、L-VRSAが増えることはありません。1) しかし、とくに熱傷治療などで、バンコマイシンを多用すると、L-VRSAの集団発生さえもおきることが報告されています。11)

 2002年7月5日付けのMMWR誌に、米国Center for Disease Control and Prevention (CDC)は、バンコマイシンのMICが、128 mg/Lを越える高度耐性 VRSA の検出を報告しました。12) この耐性は、バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci; VRE)の耐性をおこすvanA遺伝子をMRSAが獲得したものです。vanAは、vanH, vanX, vanYという一連の遺伝子とともに動く遺伝子(transposon)に乗っており、この遺伝子セットは、細胞から細胞に移って行くことができます。これらの遺伝子が発現すると、細胞壁を構成する分子単位(murein monomer) の構造そのものを変えてしまいます。バンコマイシンは、murein monomer のD-alanyl-D-alanineという構造を認識して結合し、細胞壁の合成を阻害するのですが、vanA遺伝子群が作動すると、これがD-alanyl-D-lactateとなり、バンコマイシンが結合できなくなります。13) これらの遺伝子群の発現は、バンコマイシンが存在しない状況ですと、offになっていて、抗生物質の存在するときだけ、耐性メカニズムを発現することができます。したがって、このメカニズムによる耐性菌のfitness costは、それほど高くないことが予想されます。ですから、この高度耐性VRSA (high-level VRSA; H-VRSA)の出現を許すと、爆発的に蔓延し、その場合は、バンコマイシンもテイコプラニンも全く役に立たなくなってしまう可能性があります(テイコプラニンはバンコマイシンと同じ作用メカニズムですから、バンコマイシン耐性の菌には、テイコプラニンもほとんど効果がありません)。

3. 市中獲得MRSA

 1990年頃から、オーストラリア、アメリカで、病院の外でMRSAに感染する例が目立ちはじめました。オーストラリアでは、砂漠の真ん中で病院にはほとんど行かない原住民の間にMRSAの保菌が目立ち、それと同じMRSA株が、過去10年の間に、小都市、大都市の病院に持ち込まれ、いまや、病院で検出されるMRSAの半分程度を占めるようになりました。このように、一見、市中で発生したと思われるMRSAのことを市中獲得MRSA, community-acquired MRSA(C-MRSA)と呼びます。14) 実は、C-MRSAが、病院のMRSA(health-care-associated MRSA; H-MRSA)と全く独立に誕生したものであることがわかりました。その証明は、オーストラリア、アメリカ、フランスのC-MRSA株が、H-MRSAと異なるSCCmecを持っていることから明らかになりました。15,16) その代表的なものが、type-IV SCCmecです。15) このSCCmecは、ほとんどのC-MRSAの染色体に挿入していますが、注目すべきことは、その染色体の遺伝型は、菌株ごとにきわめて多様だということです。これをMLSTで調べると、わずか40くらいのC-MRSA株を調べただけでも、過去40年間世界20カ国の病院から検出されてきたMRSAのクローン数を上回っていることがわかりました。16) このことは、C-MRSAは、type-IVで代表される新しいタイプのSCCmecが、多様な遺伝学的バックグラウンドの黄色ブドウ球菌を、次々にMRSAに転換していっている状況を示唆しています。この多様なC-MRSA 株の中で、アメリカ、オーストラリアに優性に存在するクローンは、Panton-Valentine leukocidinという白血球を傷害する毒素を産生し、この株は、1999年に、CDCが報告したMinnesota, North Dakota州の4人の小児の激烈な市中肺炎、敗血症死の原因菌となった市中獲得MRSAです。17) このような強い毒性を持った黄色ブドウ球菌由来のMRSAは、従来の院内感染菌としてのMRSAの概念を大きくかえることになるでしょう。

 幼稚園、保育園の園児の保菌検査を行うと、日本でも、 病院型と異なるSCCmecを持つMRSAが増えていることが明らかになりつつあります。これは、type-IVではなく、欧米と異なる日本に特徴的なタイプのMRSA株ですが、より多くの保菌検査を行えば、強毒型のC-MRSAが見つかる可能性があります。

 このような、病院外のMRSAの蔓延には、幼児が風邪をひいたときに抗生物質、とくにセフェム系薬が多く使われ過ぎていることが原因の一つと考えられます。もし、このような状況が続けば、病院の内外ともにMRSAが蔓延し、抗生物質を用いることを前提とした外科手術、白血病の治療、臓器移植などは、全く暗礁に乗り上げてしまうことになるでしょう。

IV MRSA感染症の対策と治療 18)

 病院内にVRSAを蔓延させ、破滅的な状況を招来しないためには、病院で用いる抗生物質の年間使用量を制限し、MRSA(のみならず他の耐性菌も)の絶対数を減らす努力をする必要があります。とくに、術後感染予防を目的とした抗生物質の使用は、欧米のように術前一回に限定すべきで、術後には使用しないほうがいいでしょう。それと並行して、院内感染対策を励行し、MRSAの伝播を抑えます。そうすると、バンコマイシンの耐性を恐れる必要がなくなります。逆に、MRSA自体を減らすことができなければ、どうしてもバンコマイシンを使わざるを得なくなり、バンコマイシン耐性菌の蔓延を免れなくなります。すなわち、バンコマイシン耐性菌への対策よりも、もっと根本的にMRSAを減らすことが大切です。因みに、もし、抗生物質が多量に使われている状況で、院内感染対策を行っても、その効果はあまりないと考えられます。

 同様に、市中獲得MRSAを増やさないためには、外来での抗生物質の使用を考え直す必要があります。とくに頻繁に用いられるセフェム系薬の使用を控え、β-ラクタム薬は、できるだけ、病院内の易感染患者の救命薬として温存する必要があるでしょう。中等症以下の市中肺炎などには、マクロライド、ニューキノロンなどで対応するべきでしょう。また、風邪など急性上気道炎には、できるだけ抗生物質を用いないことを心がける必要があります。

 MRSAの治療には、個々の症例に対する臨床医の注意深い対応が大切になります。臨床医は個々の症例において感染しているMRSAの弱点を探して抗菌薬を選ばなければなりません。病院のMRSAは、ペニシリン・セフェム系抗菌薬の耐性だけでなく、マクロライド、アミノ配糖体、テトラサイクリン系、キノロン系など、ほとんどすべての抗菌薬に耐性化してきました。しかし、このことは、個々の感染症例での起因菌であるMRSAそれぞれがすべての薬剤に耐性と言う意味ではありません。端的にいえば、MRSAはきわめて多様で、その薬剤感受性パターンは、病院ごとに異なっています。したがって、院内感染対策委員会が、日頃、各病院に蔓延しているMRSAの薬剤感受性パターンをモニターしておくことが、いざという場合に迅速な対応を可能にします。たとえば、救命を必要とする緊急のMRSA感染症の場合、感受性であればリファンピシン、ST合剤、クロラムフェニコールなどをバンコマイシンと併用して対応することができます。このように、現在あまり用いられない古い薬剤が、MRSAに有効な場合があります(バンコマイシン自体も、MRSAの特効薬として開発された薬ではなく、1958年以来用いられている古い抗菌薬のひとつです)。ただし、このような薬剤を用いた場合は、その後の院内のMRSAの感受性パターン変化のモニタリングが重要であり、これら薬剤に耐性化したMRSAが院内に蔓延した場合には、再び同様の治療を行えなくなります。とくにリファンピシンは耐性になりやすいので、その使用にあたっては院内感染対策委員会に報告しながら注意深く使用するべきでしょう。

 もうひとつのMRSA感染症治療法は、併用療法です。もはや、単剤で100%有効な抗菌薬が存在しなくなった現在、新しい新薬が開発されるまでは、手持ちの薬剤を巧妙に組み合わせて用いてMRSAに対処する必要があります。例えば、MRSAの耐性の本質であるPBP2'という細胞壁合成酵素に比較的良い活性をもったアンピシリンの合剤であるスルバクタム/アンピシリンとアルベカシンを併用することにより、MRSAに対し良い相加、相乗作用が得られることが報告されています。この併用は、アンピシリンが、MRSAに特異的なPBP2'に対して、β-ラクタム薬の中で、最も結合親和性が高いというエビデンスに基づいています。19) 今後、VRSAを増やさないためにも、考慮すべき併用療法のひとつです。また、バンコマイシンとペニシリン・セフェムなどのβ-ラクタム薬の併用は試験管内で拮抗現象が観察されますので、注意して行うべきでしょう。20) 

 バンコマイシン、テイコプラニンと異なる作用メカニズムを持った抗MRSA薬をできるだけたくさん用意しておく必要があります。古い薬としては、上記しましたが、比較的新しい抗生物質として、リネゾリド、シナシッドがあります。前者は、米国で、後者は欧州で、すでにMRSAの治療薬として承認されています。バンコマイシンの奏効しない症例に用いて、良い結果が得られています。日本では、これらの抗生物質はVREのみにしか保健使用が認可されていません。しかし、臨床家は、救命を必要とするMRSA感染症の場合、バンコマイシンが奏効しない場合は、これらの抗生物質の使用も念頭におくべきでしょう。

 MRSAのゲノムの全塩基配列の決定が2001年に完成しました。21) 今後は、ゲノム創薬により、MRSAの治療薬を開発する必要があります。しかし、我々が過去半世紀、学んできたことは、盲目的に抗生物質に頼った感染症の治療は、もはや成功しないということです。耐性菌を増加させたのは、我々が抗生物質を使用したためです。このことは、もし、我々が上手に抗生物質を使うことができれば、その結果生じる耐性菌の種類と数をも、うまくコントロールし得ることを意味しています。抗生物質は、大量に使うとその魔法が解ける「魔法の弾丸」なのです。

 

V. 参考文献

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