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高張力鋼の溶接−割れとその防止対策− Welding of High Strength Steels−Cracking and Its Prevention− 1. はじめに 鋼構造物に対する高張力鋼の適用には,板厚の減少を可能として鋼材重量を軽減し得ること,あるいはより高い設計応力をとり得ることの利点があり,高張力鋼の用途は著しく拡大されてきた。国内においては,1950年代半ばに490MPa級高張力鋼が水力発電所水圧鉄管及び橋梁に,引き続き570〜780MPa級高張力鋼が多くの分野で相次いで実用化された。1990年代後半には本四連絡橋明石大橋に780MPa級高張力鋼が大量に採用され,また,21世紀初年度には重構造物である東京電力神流川水力発電所水圧鉄管に950MPa級高張力鋼が初めて採用されたことは記憶に新しい。 上述のように高張力鋼が普及する一方で,1960年代から1970年代にかけて溶接割れ,主に低温割れの問題がクローズアップされた。溶接割れの問題とその防止技術の検討は,高張力鋼普及拡大の歴史そのものと言っても過言ではない。(社)日本溶接協会は溶接割れ感受性の改善を考慮してWES3001−19831)に各種高張力鋼のPCM上限値を設定し,(社)日本鋼構造協会からは実継手における低温割れ防止条件の選択基準2)が推奨された。鋼材については優れた溶接性とHAZ靭性を有する低PCM型高張力鋼が開発され,一方,溶接材料については溶接割れの防止のために超低水素化に関する検討が積極的にすすめられた。 このようにして溶接割れは大きく改善されてきたが,現在でも決して皆無ではなく,鋼材,溶接材料あるいは溶接施工条件の選定を誤ると大きな問題が生じる。 本報では,特に高張力鋼の溶接において,最も重大な欠陥とされる溶接割れについて,その種類,発生原因及び防止対策を概説する。
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