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第1回 ピアノ線と硬鋼線
1.ピアノ線の用途と種類
ピアノ線と称するものには弁ぱね用ピアノ線,ばね用ピアノ線,楽器用ピアノ線などがあるが,通常はばね用ピアノ線を単にピアノ線と呼んでいる。JISG3522には,A種,B種およびV種の3種類がある。ピアノ線の用途としては,ピアノV種は繰り返し数の大きいぱね,特に自動車,船舶,農機具などの各種弁ばねに使用される。ピアノ線A種、B種は自動車のクラッチぱね,ブレーキばねなどの重要部品や電気機器,電子部品,工作機械,建設機械などの部品ばね,計量器ぱね,運動機器その他の高級ばねに使用される。ピアノ線A種は許容応力もかなり高く,繰り返し荷重に対する疲れ等に対しても好ましい特性を持っている。また,設計上どうしても高い引張強さ,耐へたり性を要求されるばねにはB種が適当であるが,きびしい成形加工などで問題となる靭性面では,A種より若干劣る。
2.ピアノ線の製造方法
ピアノ線は化学成分が均一で偏析がなく,不純物,非金属介在物などの少ないことが要求されるので,その母材となるピアノ線材は,JISで規定されているP,S,Cuなどのほか,有害な不純物の少ない厳選した高級スクラップ,または高級銑鉄を主原料とする。電気炉または転炉で溶製を行い,炉外精錬で不純物を低減後,連続鋳造,分解圧延で鋼片が作られる。鋼片は表面の欠陥が入念に除去されたのち,さらに十分な管理のもとで加熱圧延され,有害なきず,脱炭などの欠陥を有しない優秀なピアノ線材に仕上げられる。ピアノ線の製造工程は品種により異なるが,基本的な管理が必要である。ピアノ線の線材以降の代表的な製造工程は図1のとおりであり,パテンチングという熱処理を施した後,酸洗,表面処理を行い,常温で伸線加工を施して仕上げられる。なお,製品の寸法に応じて上記工程が繰り返し行われる。またV種の場合には途中工程でシェービングや連続センタレス研磨が行われる。

3.硬鋼線の用途と種類
硬鋼線は炭素含有量によっていろいろな名称がつけられるが,JISG3521では引張強さに応じてA種,B種,C種の3種類に分けられ,記号はSW-A,SW-B,SW-Cで示される。硬鋼線の用途には,安全ピンのばね,スイッチ類のばね,はかりのぱね,椅子やベットのばね,自転車のサドル,スプリングシャッタの巻上げぱね,玩具用ばねなどがあり,あらゆる産業で使用されている。
4.硬鋼線の製造方法
素材はJISG3506(硬鋼線材)に規格化されたものを用いるが,マンガンの含有量によりA種とB種がある。一般には炭素の含有量により0.30%C,0.40%C,0.50%C,060%C,Q70%C,O.80%C,のグルーブに分けられ,呼称としては,0.80%C材には80力一ボンといった言い方が用いられる。
5.ピアノ線と硬鋼線の相違
?線材の差
ピアノ線材と硬鋼線材の化学成分の違いを見ると,例えぱJISG3502ピアノ線材SWRS82AとJISG3506硬鋼線材SWRH82Aの相違は表1の様になる。ピアノ線材は硬鋼線材に比較してP,S,Cuなどの不純物が厳しく管理されている。また線材のきず,脱炭についてもピアノ線材では腐食試験の結果.きず深さがO.1mm以上あってはならないし,脱炭検出試験の結果,全炭層の深さが0.07mm以下でなければならないとされているが,硬鋼線材にはこのような規定はない。従って,ピアノ線はその素材である線材から硬鋼線とは品質レベルが異なっている。

?製品規格の差
ピアノ線と硬鋼線のJIS製品規格の相違を表2に示す。ピアノ線は硬鋼線に比較し,引張強さ,捻回値,きず,脱炭,線径が厳しく規定されている。
従って,用途・使用条件を十分考慮した上で,ピアノ線・硬鋼線の使い分けを考えなければならない。
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