平成22年度 年次大会
2010年4月24日、日本大学薬学部にて平成22年度年次大会が開催されました。
総会の中では出版が待ち望まれている勝本謙先生著作の「日本産菌類集覧」ついて、編集責任者の安藤勝彦先生からまもなく発行となる旨の報告がありました。菌類の多様性を追究する多くの方々にとってたいへんうれしいお知らせでした。
話題提供講演は「冬虫夏草研究の最近の動向」をテーマとして2名の講師にお話しいただきました。佐藤氏(森林総研九州)は、科博に保管され国外からも注目されているいわゆる小林標本の地道な確認・整理作業の状況を報告されました。今後の課題として、失われたと判断される基準標本については早期にネオタイプを指定することや、図版等を対象としたエピタイプ指定の必要性についての提案がありました。また経験と労力を要する探索調査については、広いネットワークをもつ各種菌類関係団体との協力関係が必要との提案もありました。日本から世界に向けた情報発信をより効率的に進めるためにも、幅広いネットワーク構築はたいへん重要であるとあらためて感じさせられました。
Sung氏(科博)はDNA塩基配列情報に基づき冬虫夏草類とその近縁菌群の祖先形質の復元を目指しており、同グループにおける宿主特異性の進化および最新の分類体系について紹介されました。そして祖先形質の復元の結果、生物界をまたぐ宿主の変換が頻繁に起こったこと、また分子系統的に意味を持つ形態的特徴としては、例外もあるものの子座の色および質、子のう殻の付きかた、アナモルフの形態が特に重要であることを紹介されました。
一般講演では、鶴海氏(NITEバイオ)が、これまでズキンタケ綱と思われていたPseudaegerita matsushimaeが28S rDNAのD1/D2領域の解析によってフンタマカビ綱ボタンタケ目Hypocrea属(アナモルフTrichoderma属)と極めて近縁であることを報告されました。小出氏(筑波大)は、さび菌の1種Melampsora coleosporioidesがシダレヤナギおよびムラサキケマンを宿主とした異種寄生性生活環を有することを初めて明らかにした研究内容を報告されました。稲葉氏(NITEバイオ)は、セルロース分解活性を調査するために供試した318株のうち、活性を示したほとんどの株が倒木や落枝上に子実体を形成する種であり多くが白色腐朽菌である一方で、Athelia rolfsiiやThanatephorus cucumerisといった植物病原菌類も含まれること、そして、同一子実体由来であっても菌株によって培養上清のセルロース分解活性に差異があることを報告されました。深澤氏(狭山丘陵いきものふれあいの里センター)は、木材の分解過程後期での各腐朽型菌類の発生頻度と、白色腐朽および褐色腐朽をもたらしている菌類を調査し、アカマツ倒木では6分類群の白色腐朽菌と3種の褐色腐朽菌が連続的に作用して分解に重要な役割を果たしていることを報告されました。広瀬氏(日大薬)は、日本のUmbelopsis isabellinaの遺伝的変異と分布パターンを調査し、15のハプロタイプが見出され、南方地域では北方地域ではみられない2種類のハプロタイプが分布していること、また、南方地域のハプロタイプの多様性は北方地域に比べ低い傾向にあることを報告されました。
今大会の一般講演の演題数は5題と少なかったのですが、その分活発な議論がおこなわれ有意義な講演会でした。恒例となっているオークションも華麗な競売人の手腕により昨年と同様の盛り上がりをみせ、若手研究者のための国際会議渡航費用として活用される資金も十分に集まりました。ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。
WS担当幹事 岡根 泉
平成22年度 年次大会 プログラム
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