「光るきのこの紹介」 保坂健太郎(国立科学博物館)
「光るきのこの分類・生態」 村上康明氏(大分県農林水産研究指導センター)
「生物発光のメカニズム」 大場裕一氏(名古屋大学大学院生命農学研究科)
「光るきのこを題材にしたエコ・ツーリズム~培養から展示まで」
山下崇氏(NPO八丈島観光レクリエーション研究会)
「植物園における光るきのこ展示の実際」 中島智恵子氏(東京都夢の島熱帯植物館)
2010年12月11日、東京農業大学世田谷キャンパス・グリーンアカデミーホールにて、第25回日本菌学会関東支部シンポジウム「光るキノコについての最前線:研究からエコ・ツーリズムまで」が開催されました。
生き物が光る、という現象は古くから多くの人々を魅了してきました。人がホタルの光に胸をときめかせるのも、生物が発光することに不思議を感じている証拠でしょう。また、光るクラゲでノーベル賞を獲得した下村脩博士の研究に見られるように、発光生物の基礎研究が大きな発見につながる可能性も示されています。
しかし、動物やバクテリアの発光メカニズムに比べると、発光きのこについては、あまり注目されてきませんでした。材料の入手が困難であること、実験室での取り扱いが難しいこと、そもそも菌学者が少ないこと、など様々な要因が考えられますが、現時点で光るきのこについてわかっていることは非常に限られます。
今回のシンポジウムでは、光るきのこにかかわる演者に、基礎から応用までのさまざまな側面を紹介していただきました。
村上康明氏(大分県農林水産研究指導センター)からは、日本で発見されている発光性のキノコについて、未記載種である可能性のあるものも含めて詳しく紹介していただきました。これだけ魅力的な材料に学名が付いていない現状を目の当たりにし、また生態的にも謎が多いことからも、基礎菌類学のより一層の発展が必要であると感じました。
大場裕一氏(名古屋大学大学院生命農学研究科)は、過去数百年の歴史があるキノコ発光の研究について、最新の手法と新たなアイディアで取り組む様子を披露されました。数々の研究者が証明に失敗してきたなか、大場氏の示された非常に興味深くかつ説得力のあるデータは、きのこの発光の謎が一気に解き明かされる可能性を感じさせました。
山下崇氏(NPO八丈島観光レクリエーション研究会)は八丈島の観光振興に取り組む立場から、光るきのこが持つ自然教育への可能性について議論されました。いわゆる専門家による講義・観察会に興味を示さないような人たちが八丈島での光るきのこツアーを通じて生き物好きになる様子に、最近の理科離れを食い止めるためのカギが隠されているように思われました。
中島智恵子氏(東京都夢の島熱帯植物館)は、植物園でヤコウタケを栽培し、通年展示に成功している例を示されました。試行錯誤の末、安定的に展示に成功している様子と、見せるだけにとどまらず触る・匂うなどより体感的な展示に取り組む姿勢は、教育に携わっているすべての参加者が共感すべきものだと思いました。
シンポジウムでは各講演者に対して多くの質問が投げかけられ、活発な議論がおこなわれました。引き続き講師も交えて行われた懇親会でも、さまざまな質問が飛び交い、交流も深まりました。参加された全員にとって意義深いシンポジウムなったのではないかと思います。講師のみなさま、および参加者の皆様に感謝申し上げます。