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2009年6月 更新しました



  日本植民研究会 2009年度 全国研究大会のご案内

17回大会では共通論題報告のテーマを「戦時経済の展開と資本市場―日本植民地・勢力圏における特殊会社との関連から―」と設定し、近年の資料公開によって進展した南満洲鉄道株式会社と台湾拓殖株式会社を対象とした研究成果から報告をお願いしました。
 かつての帝国主義史研究では、それぞれの特殊会社は「満鉄研究」や「東拓研究」、あるいは「台拓研究」などといった範疇で扱われており、互いを意識しつつ個別的に進展してきました。「満洲」や朝鮮、台湾など、それぞれの地域における軍事的・政治的支配との関連で特殊会社の機能を検討するこれまでの研究が、日本帝国主義の特質を解明するうえできわめて重要な役割を果たしてきたことはいうまでもありません。しかし他方、これらの特殊会社が経営活動を存続しえた要因や条件を従来の帝国主義史研究が十分に説明してこなかった点も指摘されなくてはなりません。

 この最大の原因は、政府が付与した法的特権が特殊会社の企業活動を担保するとアプリオリに見なしてきた点にあるとわれわれは考えています。こうした議論を乗り越えるべく、近年の研究では、政府の制度的保障やその表裏関係にある政府の介入が特殊会社の経営に対して必ずしも好ましい影響を与えるとは限らないこと、特殊会社に課せられた政策的要請と経営基盤との間に乖離が生まれることを論じつつ、政府の介入に対する特殊会社の主体的な活動の側面が明らかにされてきました。また資金調達面では、株式会社形態を採用する特殊会社は常に資本市場と対峙せざるを得ないことから、業績の高低や株主の動向が「国策」遂行の如何を規定することも示唆されています。

 以上の問題意識を踏まえたうえで、今回の大会共通論題では制度面からのアプローチにとどまらず、資本市場との関係から特殊会社の活動実態を解き明かすことを目的としました。その際、経済統制が進展しつつある戦時期を分析期間とし、企業統制を含む「政治力」と特殊会社の関係についても解明することを試みています。

 これまで日本植民地研究会は、帝国主義史研究を中心的な柱としつつ、ポストコロニアリズムや「植民地近代論」、帝国史研究など、植民地の問題に関わるさまざまなアプローチを俎上にのせ、その理論と実証の関連を多面的に考察してきました。今回の共通論題報告は、いわば経営史研究の領域から特殊会社を検討するものですが、経営と「国策」、政治的支配と経済的進出との関連を問い直すうえで、今回の共通論題報告が、日本植民地研究の新たな研究局面を切り開く出発点となることを願っています。フロアーからの積極的な議論を心から期待しています。また、会員以外の方の参加も歓迎しておりますので、大学院生や関心をお持ちの方がおりましたらぜひ参加をお勧めください。



<日時>  2009年7月5日(日) 9:30〜18:00

<場所>  東京都豊島区西池袋 3‐34‐1 立教大学 太刀川記念館3階 多目的ホール

<プログラム>

9:00-     受付開始
9:30-9:40   柳沢遊代表委員 開会挨拶

9:40-10:40  自由論題報告 フィリッポ・ドルネティー(慶應義塾大学大学院)

「撫順県馬郡村における満洲国協和会」
10:40-11:10  会員総会
11:10-12:30  昼食・休憩  

共通論題報告  
「戦時経済の展開と資本市場―日本植民地・勢力圏における特殊会社との関連から―」
 司会 吉川 容(財団法人三井文庫)

12:30-12:40    共通論題の設定趣旨      柳沢遊(慶應義塾大学) 

12:40-13:00    問題提起           谷ヶ城秀吉(立教大学)

13:00-13:40    第1報告           平山 勉(映画専門大学院大学)

「経理統制下の株式市場における企業競争-南満洲鉄道の1940年増資を事例として-」

13:40-14:20    第2報告                    齋藤 直(早稲田大学)

「国策会社の資金調達は容易であったのか-戦時期における台湾拓殖の事例を中心に-」

14:20-14:40   休憩

14:40-15:20   第3報告               谷ヶ城秀吉(立教大学)

「戦時期における国策会社の利益獲得競争-台湾拓殖の「国策性」事業分析を事例に-」

15:20-15:40   コメント1                 波形 昭一(獨協大学)     

15:40-16:00    コメント2                 鈴木 邦夫(埼玉大学)

16:00-16:20   コメント2                 加藤 健太(高崎経済大学)

16:20-18:00    討論


18:30-20:30   懇親会  ( 夜来香FORMOSA池袋店 03-3590-2773 )


■ 共通論題報告概要

1報告  平山  勉 (映画専門大学院大学)「経理統制下の株式市場における企業競争-南満州鉄道の1940年増資を事例として‐」

拙稿「満鉄の増資と株主の変動」では、従来、「満州国」と関東軍による切捨てとされてきた満鉄改組を、株式会社としての利潤を追求した経営合理的な行動として評価した。こうした行動が、国策会社から株式会社への脱却という二項対立的なものではなく、国策を利用して更に利潤を追求しようとする態度の表れであり、そうした態度を株主は高く評価するようになっていたのではないか、というのが報告者の問題関心である。そこで、主に3つの資料に依拠して分析を行った。第一に、1940年増資の払込期間における株主と株式の動向を記録した閉鎖機関関係資料、第二に、経理統制令をめぐる東京支社の内部資料、第三に、満鉄株主会の会報である。本報告では、満鉄が経理統制という「国策」をも活かして、利潤を追い求め、株式市場での他社との競争を通じて、株主からの安定的な資金調達を果たしてきたことを、1940年増資を事例に明らかにしたい。

2報告   齊藤 直(早稲田大学)「国策会社の資金調達は容易であったのか‐戦時期における台湾拓殖の事例を中心に‐」

資金調達が容易であったと暗黙裡に想定した上で、国策性事業の遂行について検討を加える傾向がある先行研究の限界を踏まえ、国策会社といえども、その業績の高低に応じて、資本市場からの選別に直面していたことを示すことを、本報告の課題とする。
 具体的には、業績が悪かった国策会社として台湾拓殖をとりあげ、長期資金の調達方法のうち株式、社債による資金調達に際して、同社がいかなる困難に直面したかを明らかにする作業を通じて、上記課題に接近する。株式については、既に公表した研究成果を踏まえつつ(齊藤2008、2009)、さらに投資家による株式取引に関する分析を加えることにより、投資家にとって国策会社が民間企業と比較して特別ではないことを示すとともに、社債については、「台湾拓殖株式会社档案」に含まれている、拓殖債券発行に際しての銀行との交渉過程に関する記録を用いて、台湾拓殖が社債発行に際していかに苦しい立場に置かれていたのかを明らかにする。

3報告  谷ヶ城秀吉(立教大学)「戦時期における特殊会社の利益獲得行動‐台湾拓殖の「国策性」事業分析を事例に‐」

本報告は、特殊会社に対する資本市場の圧力を検討した平山・齊藤の報告を踏まえ、かかる圧力が企業行動に与えた影響を具体的に明らかにすることを課題とする。分析対象は、齊藤と同様に台湾拓殖株式会社とし、同社の利益獲得行動を一次資料に即して解明する。
 本報告は以下の順序に従って前記の課題を検討することとする。まずはじめに、台湾拓殖設立時の収支計画と実績が掲げられ、その特色や差異が示される。ついで政府から現物出資された社有地経営の実態を明らかにしつつ、台湾総督府の方針に規定された収益力向上の限界や土地評価格の問題などが利益形成の観点から述べられる。最後に低収益の「国策性事業」と理解されている海南島事業の具体的な収支を明らかにしたうえで、同事業に付随する国庫補助金と台湾拓殖の利益獲得行動との関連が論じられる。



日本植民地研究会編『日本植民地研究の現状と課題』(アテネ社、2008、3780円)発刊のお知らせ


 近年、植民地に関する研究はポストコロニアル研究や帝国研究の高まりの中で、かつてない多様性を生み出している。
 2006年6月の第14回日本植民地研究大会の成果を下にして、大幅に新しい内容を加えた本書では、戦前の「大日本帝国」における公式・非公式帝国の各植民地(朝鮮、台湾、樺太、南洋群島、満州)ごとの研究の現状を明らかにするのみならず、「帝国主義論」や「ポストコロニアル研究や帝国研究」といった研究視覚の変遷をも踏まえて、今後の日本植民地研究のあるべき方向性を提示していきたい。


第一章 「帝国主義論と植民地研究」岡部牧夫、第二章「ポストコロニアリズムと帝国史研究」戸邉秀明、第三章「朝鮮」三ツ井崇、第四章「台湾」谷ヶ城秀吉、第五章「樺太」竹野学、第六章「南洋群島」千住一、第七章「満州」山本裕

詳細はこちらをご覧下さい(PDFファイルで開きます)。


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