[出版物・資料]
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naifuru  第27号(p.2&3)


「2001 地震火山・世界こどもサミット」の冒険

写真1 ペットボトルの中に満たした
ゼラチンの「地殻」に、注射器で油の
「マグマ」を注入するオリジナルの
「マグマ上昇実験」。注射器をゆっくり
押すと、油のマグマが平べったく貫入
していきます。          
 この夏、世界の地震・火山の被災地から子供たちを迎え、7月20日(金)〜22日(日)の2泊3日、1986年噴火から15年目を迎える伊豆大島で、「2001 地震火山・世界こどもサミット」が開かれました。心配された台風の影響もなく、東京港と熱海港からの参加者を乗せた高速船は昼前、相次いで伊豆大島・元町港に着岸しました。子供たちがつぎつぎ船を下りてくるのを出迎えて、スタッフの気持ちは引き締まりました。例年にない猛暑の中、支障なくプログラムを終えることができるだろうか。島外と地元・伊豆大島からの参加者は、オープニングの会場で初めて全員が顔をあわせ、 さっそく自己紹介とグループわけをかねたゲームが始まりました。
 3日間のプログラムは、
  7/20 地層大切断面・波浮港・筆島で現地レクチャー
      夜間のレクチャー(津波シミュレーションなど)
  7/21 GPSを使ったゲーム(大島公園)
      溶岩流先端での見学(元町)
      溶岩流と岩脈の実験(都立大島高校)
      子供たちによるシンポジウム(火山博物館)
  7/22 三原山・C火口で現地レクチャー
       (猛暑のため中止)
      サミット宣言
というものでした。
 日本地震学会が日本火山学会と協力して、一昨年から始めた「地震火山こどもサマースクール」も3年目を迎えた今年は、学会の法人化記念事業ということで装いを改めましたが、この企画が当初から目的としてきたところにふれておきましょう。私たちには目指すものが三つあります。一つは、参加する大人と子供が「自然そのもの」にふれること。一つは、なるべく「教える・教えられる」という学校的構図から遠ざかること。最後の一つは、自然の前では大人も子供も同じ「人間であり、人間にすぎない」ことを、実感してもらうことです。それは具体的には、自然のまっただ中で最先端の研究者に自然についての奥深いアプローチをしていただく、という方法になりました。
写真2 「どうして、溶岩の途中に丸い穴があるのかな?ほら
そこを見てごらん」。専門家が解説をする巡検とは違って、
子供たちが不思議な景色に気づいて考えてもらうのがミソ。 
 第1回は1930年に北伊豆地震を起こした静岡県函南町の丹那断層、第2回は噴火後間もない北海道・有珠山をフィールドに、主に地元の子供たちを対象としたサマースクールを開いてきました。いずれも大きな自然災害に見舞われた土地です。特に昨年の有珠山の場合など、計画決定後に火山性地震が頻発し、一時は実行委員の多くが計画の中止を覚悟するにいたりました。しかし、地元の子供たちは危険にさらされながら避難生活を続けなければならないのであり、そのような状況だからこそ、自分の足下で何が起こっているのかを正しく知る必要があるとも思われました。そして、「こういう時だからこそ、ぜひやるべきだ」ということに決しました。サマースクール当日は、新しい火口を間近に見ることが出来ました。それはまさに、日常生活のただ中で起きた噴火、「下駄履きで見に行ける火口」でした。子供も大人も、そこからさまざまなことを感じとってくれたことと思います。
 今年も伊豆大島での開催と被災地からの子供たちの招待については、思い悩みました。特に三宅島については大量のガス噴出が続き、帰島の目途も立たない現状、しかも天候さえよければ、島は目の前に見えるのです。同行取材のマスコミの方々からも、「かえって心理的な傷を与えはしないか」という危惧が出されました。しかし私たちは今までの経験をとおして、自然をいちど自然そのものに返してやることと、その中に人間が自分の足で立つことの大切さを痛感していました。
 現在の社会では自然は、「守るべき環境」「災害の原因」「利用の対象」などさまざまの人間的意味を負わされ、都合の良いように使い分けられているのが、現実ではないでしょうか。しかし、地震や火山噴火という激しい自然現象が私たちに示してくれるのは、そういう人間の都合を越えた「ありのままの自然」です。
写真3 台湾からの中高生たち3人と一緒に記念撮影。
2日目の夜には、みんなすっかりうちとけていました。
 理科教育の危機が問題にされる昨今ですが、これは教育全般の問題でしょう。どの教科のどの教科書を開いてみても、そこで扱われる問題は、大人の手によってきれいに整理されています。それは知識の整理用としては便利なものかもしれません。が反面、「疑問」が芽生えることを、避けているようにも見えかねません。みずみずしい頭脳と好奇心を持つ子供たちにとって、「疑問」や「試行錯誤」「失敗」を許さない教育が、深く鋭い刺激をあたえられるはずがありません。文学の世界を例にとっても、多様な読み方を許すからこそ古典はそれぞれの時代に古典たり得てきたわけで、単一の解釈しか許さないような作品が、古典となった例はないでしょう。
 自然は「多様なる自然」以外の何者でもありません。かりに自然が被災者の心に傷を与えていたとしても、傷を自分の目から隠すことは、自然からも目を背けることであり、心のさらに深部に傷の根をはびこらせることにしかならないでしょう。
 そう考えた私たちは、やはり被災地の子供たちにこそ、自然と自分の傷をきちんと見つめ直してもらう機会にしたいと思いました。結果的には費用や準備期間不足等のため、被災地からの参加は伊豆諸島・有珠山・神戸・呉・台湾・トルコに限られましたが、当初抱いたさまざまな危惧は見事にクリアされました。帰りの船に乗り込む子供たちからは、「来年も来たい」、「来年はどこでやるの?」等の声が寄せられ、くたびれきっていたスタッフの顔に笑顔が戻りました。子供たちの「知りたい」という欲求には、大人の想像する以上のエネルギーがあふれていることを、思い知らされた3日間でした。スタッフから「子供は面白い」という声が聞かれたのも、うれしいことでした。

(世界こどもサミット実行委員会  桑原央治)

       −−−−−− サミット宣言 −−−−−−
               はじめに
 15年前噴火の年に生まれた私は、噴火も地震もないラピュタのような空に浮かぶ島
を作りたいと思いました。でも、今回こどもサミットで3日間大島でいろいろな こと
を勉強しました。私の住む大島も、日本列島も、地震や火山の恵みによって創られた
島だと言うことを知りました。また、大きな災害を経験した子どもたちと体験を共有
し、交流を通して地震や火山の恐ろしさを学び、災害を減らすことについて深く考
えさせられました。【大島町立第1中3年生】
 私たちは浜松から来ましたが、私はただ面白い体験をできたらいいなと言う気持ち
だけできたのですが、こんなにたくさんの人が勉強をしにきて、いろいろ知ろうとし
ていることがすごいと思いました。これから私たちにできることは、地形に興味を持
って調べる気持ちを持ち続けること、火山の恵みや自然の力によって生まれた島を大
切に使っていくことです。将来はマグマを噴火する前に汲み上げて熱を利用したり、
溶岩を利用して土地を作ったりできるようにしたいです。地震のエネルギーを地震が
起こる前に利用できるようにしたいです。みんなで災害について知っていけば、これ
からどうしようか考えることができるので、災害の軽減になると思いました。この地
震火山世界こどもサミットを計画してくれた方々、参加しているみんなに感謝してい
ます。【静岡県立浜松北高2年生】
               宣言
 1.歩いていこう 地球と共に。知識ひとつで変わる世界
 2.噴火のあと 大島で知った自然の恵み
 3.災害を越えて 人の輪を広げよう
  【静岡県立浜松北高2年生、トルコ中学3年生、台湾高校3年生、同高校1年生】
※【】内は読み上げた参加者の学校と学年です。


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