The Victorian Studies Society of Japan
 

会長挨拶:荻野昌利

このたびヴィクトリア朝文化研究学会第二代会長の大任を拝命することになり、略式ながら会長としてまずは一言、学会のHPをお借りして会員の皆様に就任のご挨拶を申し上げます。

改めて申し上げるまでもないことですが、本学会は「会則」の第2条に謳われている通り、「本会は文学、歴史、経済、美術などのジャンルを通しての研究に基づきながら、そのジャンルのみにとらわれることなく、広い視野からの学際的研究によりヴィクトリア朝イギリスについての理解を深めることを目的」として、発起人の松村昌家氏を会長に2001年11月に大手前大学で第1回設立総会が開催され、正式に発足をいたしました。爾来ユニークな学際的研究機関として着実に実績を積み重ね、本年11月の第7回全国大会も日本大学文理学部にて開催され、盛況のうちに無事終了したところであります。これもひとえに学会設立時より会長として学会の発展に献身されてきた松村氏と、それを支援してこられた有志各位のご尽力の賜物であります。学会はこうした会員各位の情熱と善意に支えられて、年々進展をつづけ、会員数は現在300人を優に超す状況にあります。学会誌の『ヴィクトリア朝文化研究』も2003年以降年一回定期的に刊行され、本年も11月に第5号の発行を見るに至っております。

しかしながら、今般、会長として長らく任に当たられた松村昌家氏が、本務校の大手前大学を辞するにあたり、まことに残念なことですが、当研究学会の会長の職も併せて退きたいという強い意向を示され、諸般の事情(詳しい経緯は割愛いたします)から、私、荻野が当面その重責を引き継がざるを得なくなりました。教壇を離れてすでに長く、半ば隠居の身に降りかかったこの思いがけない事態に、不安と戸惑いの念を禁じ得ないでいるところです。しかし、一旦お引き受けした以上は、(古風でいささか大げさな表現で恐縮ですが)老骨に鞭打って、松村前会長の足跡に泥を塗ることのないように、更なる学会の発展を期して全力を尽くす覚悟でおります。

ヴィクトリア朝文化研究学会は、先の「会則」に見られる通り、文学、歴史、経済、美術など、いわゆる "humanities" を中心とした学際的な研究組織であります。昨今は学問の専門化が進むにつれて、それぞれの学会もそれに歩調を合わせるかのように細分化され、セクショナリズム的色彩がますます強まってゆく傾向にあります。専門に拘泥する余り、偏狭な領域に学問が矮小化され、その結果広域的な視座に立ってものを見ることのできる研究者が少なくなっているような気がするのは、私だけでしょうか。そのような風潮の中にあって、学問的排他主義を極力払拭し、さまざまなジャンルの学問が一堂に会し、分け隔てなくお互いの知識と英知を出し合って、より包括的な視点でヴィクトリア朝というひとつの時代文化を総合的に把握しようとする本学会の姿勢は、けっして自画自賛ではなく、本来の文化研究の正しい方向を指示していると思います。また、これこそが現代がもっとも必要としている学問のあり方ではないでしょうか。少なくとも私は会長の職にある限り、この「会則」の精神を遵守してゆく所存です。

ただし、会員の出自を見る限りでは、現実は私を含めてイギリス文学畑の人材が圧倒的に多いことは、否定しがたい事実です。ここに先述の会則にある歴史や美術ばかりではなく、他のヴィクトリア朝文化研究にかかわる人文系列、あるいは経済、法律などの社会系列、建築や進化論など自然系列の中から一人でも多くの研究者の参加を得て、学会のさらなる活性化を図ることは、私たちに課せられた急務かと存じます。是非そうした関連領域の友人・知人への働きかけを活発に行って、新しい人材の発掘にご尽力下さいますよう、よろしくお願いいたします。

それと同時に本学会の今後の課題として、より広角な視野を確保するという意味からも、海外の同列の学会との交流の機会をより緊密なものとすることが、挙げられると思います。たとえば、イギリスのケンブリッジ大学からは "Nineteenth Century Studies" の伝統を引き継いだ Victorian Literature and Culture が、またアメリカではインディアナ大学からは「人文、芸術、科学」の総合研究を目標に掲げた Victorian Studies が定期刊行され、ヴィクトリア朝研究のもっとも権威のある学術雑誌の地位を競い合っています。こうした海外の学会誌や学会活動との交流の輪を広げ、より国際的な水準へとこの学会の水準を高めるよう努力することも必要かと存じます。人的交流については、予算その他の問題があって実現は容易ではないでしょうが、少なくともこうした学術団体や機関紙とは、インターネットなどを通じ、今後できる限り緊密な関係を築いてゆきたいと願っています。

以上のような志をいだいて、会員の皆さんのご協力のもと、私たちの趣旨に賛同する同士を、内外を問わず、さらに多方面の研究分野から募り、この学会を日本におけるヴィクトリア朝文化研究の中心母体としてさらに揺るぎのない地位を築けるようにしたい。そうした思いで、微力ですが精一杯努力することが、私に課せられた使命と信じ、全力を傾注して与えられた任期を全うするつもりでおります。どうぞよろしくご支援のほどお願いいたします。



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会長:荻野昌利
会員数: 334名(20101月現在)
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